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第51話
「…ホントに何でもないんだ。
最近トップを死守しようと走り回ってる上に、夏は食欲が落ちていくから…今日は久し振りに腹一杯食える気がする。
美味いメシ食わせようとしてくれてありがとな、矢田。
そんで、心配してくれてサンキュ。」
「そうか…俺の取り越し苦労か…それならいいんだ。
タダ飯だからな、遠慮なく食ってくれ。」
相変わらず鋭い奴。平静を装いその場をやり過ごす。
そう言えば、以前は俺の体調をいつもチェックしてたっけ。
余りに甲斐甲斐しすぎて皆んなから『彼女かオカンか』って突っ込まれてたな…
「ははっ。お前、オカンみたいだぞ。
タダより怖いものはないけどな。
でも、これで残暑も乗り切れるよ。あー、マジ美味い。」
まだ何か言いたげな矢田を無視してひたすら食べる。
そのうち諦めたのか、取り留めのない会話が続いた。
「あー、腹一杯!満足!美味かったぁ!
持つべきものは…だな。
お前に彼女がいなかったことを今日は感謝するよ。
それにしても…社内きってのイケメン独身男のお前に彼女がいないのが不思議なんだよ。
理想が高すぎて現実が追いつかないのか?」
「お前だってそうじゃん。俺はお前に言われたくないよ。
知ってるか?お前、結婚前提で付き合ってた彼女が急死して傷が深すぎて恋愛できないとか、遠距離恋愛の年上の彼女がいるとか、訳の分からない噂されてるの。」
「はあ?何?それ?」
矢田が俺をまじまじと見つめ
「皆んな、噂好きだからな。
…どうせなら、そんな独身男の俺達で付き合う?」
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