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第56話

週の始め。慌ただしい毎日の始まり。 俺はいつもより早く家を出た。 この時間ならボスは出社しているはずだ。 思った通り、ドアが開いて電気が点いている。 オープンな性格の彼は、ドアが閉まっていることを嫌い、特に混み入った話の時は別として、それ以外は、いつでも誰でも受け入れる体制を取っていた。 コンコン 「ボス、おはようございます。今お時間よろしいですか?」 「モーニン!影山。どうした?早いじゃないか。 どうぞ、コーヒーでいいかい?」 「あ、俺淹れます。」 挽き立てのコーヒーの良い香りがして、これから重要なことを話さなければならない緊張感を少し和らげてくれた。 「それで?月曜のこんな朝早くからどうした?」 何もかも知っていると言わんばかりの深い瞳で見つめられ、この人に嘘はつけないと悟ってしまう。それでも真実を伝える訳にはいかない。 「実は…これを…」 鞄から取り出したのは退職届。 それをじっと見ていたボスは、すっと立ち上がるとドアを閉めてしまった。 そして座り直すと俺をじっと見たまま 「最近痩せてしまった理由はそれか? 退職しなければならないほど、何に追い詰められているんだ? 業績も社内外の評判も申し分ない君が。 ヘッドハンティング…いや、色恋…恋愛か?」 言い当てられてドキリとした。 痩せたことまで把握してる? 顔がパァッと朱に染まるのが自分でもわかった。 これではイエスと答えているのと同じことだった。 ボスは興味深げに 「イケメンでおまけに仕事もできる、性格もいい、そんな君を悩ませるのは一体どんな人なんだい? それも仕事に支障をきたすほどに。 できればお目にかかりたいね。」

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