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第58話
「影山…俺は、真剣なら…性別を超えた恋愛も応援する。
一括りにはできないものだからな。
…遠藤が、どうして日本支社に来たのか理由を知っているか?」
…俺への復讐のため…なんて言える訳がない。
無言で首を横に振った。
「本当はN.Y.に決まってたんだ。
内示が出た時に本人がCEOに直談判に行ったんだよ。日本に戻してくれって。
その理由が…
『長年の初恋を実らせるため』
シビれるだろう?今時、そんな純愛があるなんて。
そのままN.Y.に行けば、出世街道真っしぐらのスーパーエリートコース間違いなしだったんだ。それを蹴ってまでも日本に戻りたい理由がそれだった。
『偶然見た社内報に初恋の相手が載っていた。まさかとは思ったが、間違いなかった。
このチャンスを逃したら二度と会えなくなる。
人の倍働くし、昇格はしなくてもいい、一世一代のワガママを聞いて欲しい』
それを聞いた幹部連中が盛り上がったらしくてさ、急遽異例の人事異動となったんだ。
『社内報』に覚えがあるだろう?特集で選ばれて…影山、君…載ったよね?」
「…ちょっと、ちょっと待って下さい、ボス…
俺、頭がこんがらがって…何が何だかさっぱりわからないです。
ボスの話が理解できません!
俺は…中学の時に、希を…無理矢理俺のモノにしました。
告白すらできずにアメリカに行ってしまって…
それが数カ月前、突然上司として再会して。
あの時と逆の立場になって…
やっと、彼を好きだって、自分の気持ちを自覚したんです。
でも、彼に結婚話が持ち上がってるんですよっ?
俺のせいで破談になったらどうするんですか?
会社を挙げて話を勧めてるんでしょう?
俺は…希の幸せをブチ壊すようなことはしたくないっ!
静かに身を引く、希のことも忘れる、それくらいの覚悟はできてるんです!
だから、だから退職させて下さい!そうすれば、希と関わらなくても済む…お願い致しますっ。」
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