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第59話
最後の方は涙声で、それでも言い切った。
ぶち撒けた感 満載だが、ボスはわかってくれるだろう。
感情が昂ぶり半泣きで肩で息をする俺に
「言いたいことはそれだけか?」
そしてパーテーションの方に向かって
「…ということらしいぞ、遠藤。ちゃんと聞いてたか?」
えっ…
希?
耳まで真っ赤になった希がふらりと出てきた。
まさか…今の全部…聞かれた?
希は俺を真っ直ぐに見つめている。
驚きの余り、口を開けたまま立ち尽くす俺に、ボスが申し訳なさそうに
「影山が来る直前に、遠藤が退職届持って来て…丁度いい機会だから、思ってること言えばいいと思ってね…そこに押し込んだんだ。
あ、騙した訳じゃないよ?
君達…二人とも今週は有休を取りなさい。俺が代理で申請書提出しておくから。
どうやらお互いに行き違い思い込みがあるようだね。
しっかり話し合って…誤解を解くといい。
さぁ、帰った、帰った。」
ボスは二人分の退職届をシュレッダーにかけ、ウインクをすると、俺達を部屋から追い出してしまった。
パタンと閉められたドアの前で、俺達は無言で立っていたが、突然、希が俺の腕を掴んで走り出した。
「の、希っ?」
つんのめりそうになりながら、エレベーターに押し込められた。
腕は掴んだままで。
そのまま玄関に行くと、今度は出待ちのタクシーに押し込められ、どこかへ連れて行かれる。
一体何が起こっている?
どこに連れて行かれるのか?
今日から有休って?…何で一緒に乗ってるんだ?
頭をクエスチョンマークがぐるぐると巡っている。
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