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第65話
「…あの時、どうして俺を無視して行ってしまったんだ?」
「無視じゃないっ!それは…
抱くのはお前じゃなくて、俺のはずだったんだ。
一目惚れだったんだ。初めて会った時言ったよな?
『お嫁さんになって』って。」
「…『友達になって』じゃなかったのかよ。声も小さくてごにょごにょ言ってたから、てっきり…それにずっとお前のことは『俺が守るんだ』って言ってたし。」
「抱くはずだった相手に抱かれたんだ。俺の男としてのプライドはボロボロで。
お前を俺のモノにするのを出会った時から夢見てたんだ。それが叶わなかったんだぞ?
恥ずかし過ぎて会うのを躊躇っているうちに、渡米の日がきてしまって…それっきりになったんだ。
手紙を書こうにも何て書いたらいいのかわからず….だってそうだろ?内容が内容なだけに…電話だって国際電話のかけ方も知らないガキだったから。」
「…そんなくだらない理由で俺を脅して縛り付けて、抱いてたのか?」
「くだらないとは何だよっ。俺にとったら人生を賭けた重大問題だ。」
「くだらないよっ!好きなら好きって言ってくれればよかったのに…
そんなことで俺は…あんな辱めを受けて、傷付いて…」
「…だから、それは反省してる。謝ってるじゃないか。
ホントにごめん。
でも、そう簡単に告白できる訳ないじゃないか!
…再会した時、お前まるで初対面みたいな顔して。敬語なんか使いやがって。密かに俺は傷付いたんだ。
やっとお前に会えるとドキドキしてたのに。」
「あの場でお前を知ってるなんて、どう考えてもおかしいだろう?それにお前は俺の上司だぞ?タメ口なんて使えるかよ。
それを言うなら希だって。」
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