66 / 1000
第66話
「俺が何だっていうんだよっ。」
「変な笑い方して。お前はもっとふんわり柔らかく笑う笑顔の可愛い奴だったのに。
口先だけで笑いやがって。」
「えっ?突っ込むとこそこっ?」
「人を見下した態度で何様かって。
俺は…辞令の名前を見た瞬間に卒倒しそうになって…会ったら謝ろう、許してもらえなくても…って思ってたのに…
とことん罵倒されるのはわかってたけど、『オモチャだ』って吐き捨てるような言い方されて…
お前にしたことを考えたら、それも仕方がない、それで気が済むなら…って…
その通りに俺の気持ちなんてお構いなく、自分のヤりたい時に滅茶苦茶な抱き方しやがって…
俺は…心も身体もどんどんお前に溺れていって…俺ばっかり好きになって……お前に結婚話が浮上して、辛くて悲しくて、それでもお前が幸せになるなら身を引いてって…退職も決心して…それなのに…
割り切った関係だったのに、好きな奴に染められていく身体がうれしくて切なくて…でも心は…報われない…この気持ちが…」
泣きじゃくって途切れた言葉が宙に浮いた。
溢れるように発する言葉が止められなかった。
感情が爆発してダダ漏れになっている。
俺は何度も繰り返し何を喋ってるんだ?
結局『希のことが好き』ってダメ押しで言ってるだけなんじゃないのか?
マズい。
何カミングアウトしてるんだ、俺?
ともだちにシェアしよう!