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第84話

「…斗真…ごめん…お前が余りにもかわいくって、いじらしくって…愛おしくって。 相思相愛だと思ったら止まんなくって。 俺の想いを打つけたら、こんなことに。 何でも言うこと聞くから…許して?」 事後の気怠さを纏いながらイケメンオーラ丸出しで希が訴えてくる。 いい年した男捕まえて何が『かわいくって』だよっ。 そんな拗らせた想い、全部打つけてくんなっ。 俺は唇の動きだけで返事してやった。 「ば か。 す け べ。」 一瞬きょとんとした希が吹き出した。 笑うとこじゃないだろっ。 こっちはどこもかしこもガタガタなんだって。 その笑いを制するように睨み付けると「ごめんごめん」とか言いながら、必死で笑いを堪えているが、肩が震えている。 「あぁ…ホントにかわいいなぁ、斗真…」 希はそっと労わるように何度も髪の毛を撫でると、至近距離で俺の目を愛おしげにじっと見つめている。 ヤバイ。そんな目で見るなよ。煽ってるの、お前の方じゃん。 心拍数が一気に跳ね上がった。 ぶわっと身体中の毛穴が開いて熱が噴き出すような感じがした。 多分俺は耳まで真っ赤になっているんだろう… 「…斗真…すげぇいやらしくってイイ匂いがする…」 耳元でささやかれたその甘い声は、寝起きの生理現象を起こしている下半身を直撃し、思わず身体がぶるっと震えた。 掠れた声で反撃する。 「…希…マジで今日は無理だ。 これ以上何か仕掛けてきたら…別れるぞ。」

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