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第92話

俺をぎゅっと後ろから抱え込んで、甘えるように俺の肩に顎を乗せ、ふうっと大きくため息を一つ零すと 「…何から話そうか…」 少しトーンの落ちた声にドキッとする。 「あの時、お前にヤられて逃げ帰ったのは、俺がお前に挿れたかったのに逆になってショックだったから…って言ったよな?」 後ろめたさに黙って頷く俺。 「引越しも急に決まって…お前と離れるのが嫌で、なかなか言い出せなかった。 別れが辛くて悲しくて… 小さい頃から好きで好きで、絶対お前を俺のものにするって決めてたのに、挙句にお前はあんなことしやがるし。」 「…うっ、だから、それはごめんって、何回も謝ったじゃん…」 「うん。それは、もう、いいんだ。 だって今、こうやってお前が俺のものになったんだから。」 俺はいろんな想いを込めて、身体に巻き付いている希の手をそっと握った。 「お前に何も言えずに行ったことをずっと後悔してた。 会いたくて会いたくて毎晩泣いてたよ。 無理矢理連れて来た親ともケンカばかりしてた。 電話したくても掛け方もわからないし、第一お前んちの電話番号知らなかったんだよ。」 「そこかよっ。 まぁ、何か話したいことあっても隣だから、直接ピンポン鳴らしてたしな。」 「手紙っつっても…何を書けって言う? 『お前に突っ込まれて腹が立った』って書けるか? それもエアメールで。 だから『いつか必ず日本に帰る』って決心していろんなことにガムシャラにやってきたんだ。 俺ん家って高校になったくらいから急に背が伸びる家系らしくてさ、それと同時に身体も鍛えようと、あらゆるスポーツに手を出して足を突っ込んで… あ、勉強も滅茶苦茶頑張ったぞ。 飛び級で早く卒業したしな。」

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