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第93話

「…だから何でもこなせるのか…」 「当たり前だろ?斗真に会えると思えば何でもできた。」 うーっ…じゃあ再会してからのあの態度は何だったんだ? 俺の声なき声を察したのか、希は俺の頬に ちゅっ とキスをしてきた。 「就職も迷ったんだけど…自分のやりたい職種で勢いがあって、日本にデカい支社があるとこ…選んだらここになった。 日本に転勤になればお前の実家に行って消息聞けるからな。 とにかく誰にも負けないくらい仕事をしたよ。 たまたま…本当に偶然見た日本の社報に、お前が載ってたのを見つけた時は、心臓が止まりそうになったよ。 『神様っているんだ』って本気で思った。 もう、俺とお前は結ばれる運命だ。真剣にそう思った。 だから、交渉して半ば強引に日本に戻ってきたんだ。 それなのに斗真…お前は他人行儀でおどおどして…10年来の俺の気持ちをどうしてくれるんだ ってヤケになって…あれこれやらかした… ごめんな…」 希は俺の頭を撫でながら、背後から顔を捻ってキスの雨を降らせている。 俺は目を閉じて、希のなすがままにキスを受け入れていた。 キスとともに溢れる想いが伝わってくる。 好きだ、好きだ…愛してる… 俺も、俺だってずっと希のこと想ってたんだ。 誰にも負けないくらいに… しばらくお互いを堪能したキスを終えると 「そうだ。希の家族はどうしてるんだ?みんな元気なのか?」 一瞬ぴくっと身体を震わせた希は、ふっと寂しそうに笑った。

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