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第94話

「一応元気…だと思う。 両親は…あれから一年後に離婚したんだ。 お袋はどうしてもあの土地に馴染めなくてな。 言葉もロクに通じない、食べ物も違う。これは決定的だったらしい。 その頃親父は自分中心のプロジェクトが進んでて…気に掛けながらもお袋のことはどうしても二の次になっててさ。 精神的にもかなり追い詰められてたお袋は俺達を置いて突然一人で帰国したんだ。 一度亀裂の入った夫婦関係は脆いよな。 何度も話し合いをしたそうなんだが、もうダメだった。 俺もその時に帰国しようと思ったんだけど、親権は親父にあったし、中途半端な学歴じゃ就職にも不利だし断腸の思いで留まった。 割と得意だったから、お袋の代わりに家事一切合切引き受けて…だから料理の腕も上がったんだ。 お袋は…帰国して、今は再婚してるらしいよ。 子供も…俺の義弟(おとうと)が二人。会ったことはないけど。 妻より仕事を選んだ親父は、もう仕事するしかないよな。 一人でも頑張ってるよ。 兄貴はさ、あの人はマイペースな人だから。 あっちで出会ったアメリカ生まれでアメリカ育ちの女性と結婚して、三児のパパだよ。 笑っちゃうよな、俺、叔父さんだぜ」 そんな大変なことになってたなんて。 甘えて俺の肩に擦り付いている希の頭を撫でてやった。

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