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第96話
希の真剣さは、その言葉や態度でヒシヒシと伝わってくる。
冗談なんかじゃない、これ、マジだ。
茶化してはいけないやつだよ。
真剣には真剣で返さないと。
人生を賭けた大一番。
恥ずかしくても『言わなくてもわかってるだろ?』なんて言えない。
希はちゃんと言葉にしてくれた。
俺は思わず身震いして、希の真っ直ぐな…それでいて俺の返事に不安に揺れる目をしっかりと見つめながら言った。
「希…不束な男ですが、一生よろしくお願い致します。」
「斗真っ!」
「いてててててっ!」
「あっ、ごめん!ごめん、斗真っ!」
力を緩めて抱きしめ直した希と顔を見合わせて吹き出した。
どちらからともなく近付く唇。
優しく啄ばむようなキスは、直ぐに濃厚なものに変わっていった。
息が止まるようなキスを繰り返し、舌先を戯れるように合わせる。どちらのものかわからない唾液が顎を伝い喉を落ちていく。
口内を嬲られ弄られ、酸欠で頭がぼうっとして気をやりそうになっていた。
キスだけでこんなになるなんて…
「斗真…愛してる。俺だけの…俺だけのものだ。」
希のささやく声が、段々と遠くなり…
俺の意識はそこで寸断された。
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