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第97話

おでこに当たるヒンヤリとした感覚に、ゆっくりと目を開けていく。 「…希?」 ボヤけた視界に心配そうに俺を覗き込む希の顔が映った。 「気が付いてよかった…後一時間目を覚まさなければ、医者を呼ぼうと思ってたんだ。 …何度も調子に乗って無茶してごめんな。」 「いや…大丈夫。 あの…お前にプ…プロポーズされてうれしくって舞い上がって…その…キスが…すっげぇ気持ち良くって…飛んじまった…」 「かわいいこと言うなよ。…襲うぞ?」 「無理無理無理っ!大人しくして…」 希は俺の頭を撫でながら 「これ…夢じゃないよな?現実だよな? 斗真…ホントに俺のものになってくれたんだよな?」 まだ不安そうに鳶色の瞳が揺れる。 「お前以外の誰が俺を貰ってくれるんだ? 俺は一生返品不可だからな。多少の性格の難点は許せよ?それはお互い様と言うことで… あー、何か歌にもあったな… とにかく、覚悟して受け取れ。 結び切りの熨斗(のし)付けてくれてやる。それも、とびきり豪華なやつをな。」 ニヤリと笑って言ってやった。

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