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第102話

希の手には、区役所の封筒といくつかのカタログのようなものが見えた。 それらをテーブルにそっと置くと… 目を真っ赤に泣き腫らして震える俺を抱きかかえ背中を摩りながら小さな声で言った。 「斗真?ひょっとして…後悔してる?」 はぁ?何で? 俺は首がもげそうなくらいに横にぶんぶん振って 「違う!後悔なんてするわけないっ! 今さ…俊兄と翔兄に電話したんだ。 『結婚したい』って。 そしたら…相手が希だってわかってて…『おめでとう』って…『心配すんな』って…『親父とお袋のことは任せろ』って… 俺、俺…」 希は俺の涙を親指で拭うと、ぎゅっと抱きしめた。 「…斗真…勇気出して言ってくれたんだ… ありがとう。 ホントに…ありがとう。 あの二人が味方に付いたら、怖いもんなんかないよ。よかった… 後は親父さんとお袋さんだな。 お前が動けるようになったらすぐ行こう! 俺も親父と兄貴に電話したよ。 呆気ないくらいに『おめでとう』って。 だから、俺ん家は、もう…いいんだ。 …俺さ、居ても立っても居られなくって、区役所行って婚姻届もらってきた。 それと知り合いの百貨店の外商のとこも。 有休の間に出来ることしてしまおうぜ。」 希がうれしそうにキスをしてきた。

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