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第103話
そして二日後。
俺達は電車に揺られていた。
一体何年ぶりだろう。
見慣れたはずなのに、どことなく余所余所しい風景は、それだけ俺が大人になった証拠なのか。それとも俺の気持ちがそうさせているのか。
希は窓の外をぼんやりと眺めている。
どんな気持ちで見てるんだ?
あの十年前を遡ってる気分なのか?
水のボトルを差し出すと「サンキュ」と受け取り、少し飲んで戻してきた。
俺も続けて飲むと、耳元で
「間接キス!」
とささやいて笑っている。笑いながら
「マジなキスの方が良かったか?」
と尋ねられ
「今すぐ欲しいけど…それは後で。」
見つめ合い、手を伸ばし指先にそっと重ねると、直ぐにその指をぎゅっと絡めてきた。
指を絡ませ到着まで黙ったまま、二人とも流れる窓の景色を見続けた。
少し寂れた改札口を抜けると懐かしい顔が出迎えてくれた。
「おーい!とぉーまぁー!」
「俊兄!」
「おー、元気そうじゃん。…希か?久し振りだな!随分とイケメンになりやがって…ようこそ。」
「ご無沙汰してます。…すみません、俺達のために休み取らせてしまって…」
「いーの、いーの。気にすんなって。
疲れてるかもしんねぇけど、早速行こうか。」
「はい、よろしくお願いします。」
車中では俊兄と希が和やかに話をしている。
俺は駅に着いた途端、心臓が踊り出し変な汗が流れている。
俺って意外と肝っ玉小さいのかも…
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