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第5話「手当て」

暫くすると、近くからパトカーの音が聞こえてきた。不良たちは不味いと思ったのか俺を残して立ち去る。数人の警察官がこちらへ向かって来るのが見えた。俺はどうにか立ち上がり、男たちが逃げて行った方向を指さす。数人が後を追い、残りの数人が俺に事情を聞いてきた。先ほど起きた事を話していると、もう一つこちらに向かってくる足音があった。 「大丈夫か? 蝦夷森」 「秋風……? なんでここに?」 「彼が通報してくれたんだよ」  俺から話を聞いていた警察官がそう答える。どうやら、たまたま通りがかった秋風が騒ぎを不審に思い、警察へと連絡してくれたようだった。あのままずっと暴行され続けていたら――そんなことが脳裏をよぎった。ブルリと体が震える。俺は、素直に秋月に礼を言った。警察官は、こんな時間に高校生が出歩くのはよくないと俺に説教を言い、怪我の手当てについて病院に行くかと尋ねられたが、そこまで酷くなかったので家に帰ると告げた。家までは秋風が送ってくれることになり、そこ場で警察官とは別れる。パトカーが去った後、秋風は水で濡らしたハンカチを俺に手渡してくれた。 「痛むよな」 「まぁ、な……でもまぁすぐ治るだろ」  心配そうに俺を見つめる秋風になんだか調子が狂う。俺は渡されたハンカチを頬に当てながら暫く冷やしていた。蹴られた腹が熱を帯びてじんじんするが今どうにか出来るものではないのでそこは家に帰ってから確認することにした。 「俺の家ここから近いから来るか? ついでに手当てしてやる」 「え?」  正直、また家に帰るのは嫌だった。だからと言って他人の世話になる気もない。俺は渋ったが、秋風が有無を言わさぬ雰囲気だった為、従うことにする。  歩いてものの五分ほどで秋風のマンションに到着した。五階建て鉄筋コンクリートのマンションは、どこにでもありそうな外観をしている。三階までエスカレーターで上り、角の部屋で秋風は鍵を開けて中に入った。ワンルームの部屋は意外に片付けられていて、物も必要最低限が置かれている程度だ。秋風が薬箱を準備している間に俺は、手当てしてもらうために服を脱ぐ。腹には痛々しい青痣が出来ていた。 「酷いな……背中も内出血してる」 「うわ、マジ?」  秋風が氷嚢を背中や腹に当ててくれる。熱を持ったそこはじんわりと冷やされるが、寒くて身震いしてしまう。我慢して耐えていると、秋風が口元の切り傷に消毒液を浸したコットンを当てて来た。めちゃくちゃ沁みる。 「なんであんな場所にいたんだ?」 「……ただ、一人になりたかっただけだよ」  それ以上、秋風が俺に質問することはなく、淡々と手当てしてくれる。逆にそれが有難かった。

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