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第6話
夏休みが終われば、卒業までのカウントダウンが加速する。入学した時点から卒業に向けてのカウントダウンなのだろうけれど、本当にいよいよだと思えてきた。
部活もとっくに引退した、学校に来ることもない。それは、荻野との接点がなくなることを意味する。卒業したらきっと更に距離が出来て、この胸のつかえもいつの日にか消えてなくなるのだろう。一学期の最後の日、ぼんやりとそんなことを考えながら窓の外を見ていたら校庭の端で誰かが手を振っている。
「あ、溝内」
口をぱくぱくして何かを伝えようとしているが、この距離じゃ言葉も何も届かない。面白いなと眺めていたら、突然手をぶんぶんと振り回して叫び出したようだ。
「何言ってんだ?」
「あいつ、空気の足りない金魚みたいだな。ん?金魚の糞の方が正解か」
「あ、荻野……」
「いつもお前の後追っかけまわして、大好きですって気持ちをあちこち振りまいて。可愛いじゃないか、少しは優しくしてやったらどうだ」
横に並んだ荻野が面白そうにくくっと笑った。そうして大きな声で校庭に向かって「バァカ!」と叫んだ。
「え?」
意外な行動に驚いて荻野を見ると、けらけらと笑い出した。
「あいつ、俺に敵意を剥き出しだよな。分かってんだろお前も、それとも何?焦らしてんの?」
「なっ、何を」
「いや、近藤があれだけ構うやつなんて他に居ないだろ、珍しいなと思ってさ」
俺があいつを構っている?
「あいつが勝手に来るだけだ」
「そうか?他の奴が何を言っても、見えないみたいに無視するのに?お前がやりあってんのあいつだけだぞ」
ばたばたと大きな足音で誰から近づいてきた。肩で息をしながら、溝内が腕を掴んでぐいと引っ張った。
「せっ、先輩っ!何くっついて話してるんですか!」
「はあ?寝言は寝て言え!」
「荻野先輩、隣に立たないでください!」
「はいはい、俺はもう行くな」
荻野がにやりと笑うと、「じゃあ」と少し手を上げてその場を離れていった。
「近藤先輩、明日っ、明日時間をください」
ものすごい勢いに気圧されて、つい「ああ」と返事をしてしまった。
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