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「…あぁ、起きた」
目を覚ますと、見慣れた眞洋の部屋だった。けれど、ベッド脇に置かれた椅子に座っていた人物は、見たことがない。
「――だ、れ」
耳にかかる程度の赤い髪に、前髪で目が隠れているからわずかにしか見えないが、金色の瞳。
「動かない方が、いい。眞洋を呼んでくる」
そう言い、部屋を出て行く背中を見つめながら、視線だけで周りを見る。眞洋の寝室だ。
と言うことは、マンションに戻ってきたのか。
「…くすな、起きたの?」
「眞洋」
部屋の扉を遠慮がちに開きながら顔をのぞかせた眞洋に、ホッと息を吐いた。
「あぁ、よかった。酷い熱で、うなされていたから心配で…」
ベッドに腰掛け、横になったままの僕の頬を撫でる。
「熱、だいぶ下がったけど、まだ無理に動かない方が良い」
「ありがとう、戒 。助かったわ」
部屋の入り口に立っている赤い髪の男は、戒、と言うらしい。
「…じゃあ、帰る。眞洋、薬を飲ませる事、まもって」
「えぇ」
赤い髪の男が帰り、僕を見つめる眞洋と見つめ返す僕の間に静寂 が満ちた。
今は何時で、僕はいったいどれだけ寝ていたのだろう。身体のあちこちがひりひりと痛む。
「…眞洋…」
「なぁに?」
「ありがとう、って、まだ、言ってなかったから」
「――…くすな」
僕の頬を撫でる手が止まり、眞洋が僕の名前を呼んだ。ひどく弱々しくて、僕はゆっくりと頬に添えられた眞洋の手を掴む。
「…貴方が居ないと、落ち着かなくて困るわ」
困ったように笑う眞洋に、僕は目を丸くした。
「同じ、なんだ」
「え?」
「僕も、眞洋が居ないと落ち着かなくて、胸がざわざわする」
僕がそう言うと、眞洋が僕の体を起こしながら抱きしめた。背中に回る眞洋の腕が暖かくて、ほっと息を吐く。
「……なら、私たち、同じなのね」
「うん」
同じだ。とまた呟くと、僕を抱きしめる力が僅かに強くなった。
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