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小さく息を呑んで、は、と吐いた。
「……あつい」
呟いて、また「は」と息を吐く。
眞洋の手が頬を撫でて、その手が熱くてまたあついと言葉を吐いた。
「私も、あついわ」
眞洋が笑いながらまた軽くキスをして「腕、あげてくれる?」と言うから素直に従うと、シャツをしたから捲り上げられてそのまま取り払われた。
「抱きしめたら折れそうよね」
くすくす笑いながら眞洋の指が首筋をなぞり、鎖骨をなぞる。
「ぞわぞわする…」
「そう。敏感なのね」
「心臓がいたい」
さっきから、眞洋が楽しそうに笑う。僕はそれをじっと見つめて、眞洋のワイシャツの襟に手を伸ばしゆるい力で引き寄せる。
「どうしたの?」
「楽しそうだ」
「……ふふ、そうね。楽しいわ」
楽しそうに笑う顔は、好きだ。元々綺麗な眼をしているけれど、笑うと少しだけ可愛い。引き寄せた襟から手を離して、そのまま抱きつくと、また眞洋がなぁに?と笑う。
「脱がないのか?」
「脱がせてくれる?」
「ぬが?………………………………………………………………………………………………………ボタンを外すのか?」
しばらく思案した後、眞洋を見上げながらそう聞けば、眞洋がまたくすくす笑う。
「いえ、いいわ。それよりも浴室だからシャワーでも浴びてスッキリしましょうか」
「…うん」
「眞洋は、世話が好きなのか」
リビングのソファーに膝を抱えた状態で座りながら、背後で僕の髪を乾かしている眞洋にそう問いかけた。
「んー…、そうね。くすなの世話を焼くのはすきよ」
「……そう、か」
ドライヤーの排気音と、眞洋の髪を梳く手の感触につい眼を閉じる
。
「ねむたい?」
「いや、眞洋の手は気持ちいい」
「あら、そう?」
「うん。でも僕は眞洋自体が好きだから何をされても気持ちがいい」
僕がそう言うと、眞洋が背後で「あー…」と間延びした声を漏らした。
「…ねぇ、くすな」
「なに」
「貴方の誕生日、わかるかしら」
唐突に訊かれて、僕は小さく誕生日?と聞き返した。ドライヤーの音が止み、眞洋が僕の頭を撫でながら、「そう、誕生日」と繰り返す。
「誕生日…か。考えたこともなかった」
抱えた膝に顎を乗せながらぼんやりとテレビの画面を見つめる。眞洋が隣に腰掛けて、ギシリとソファが沈んだ。
「……僕の誕生日はないのかもしれない」
ポツリと呟くと、眞洋がふふ、と笑う。
「なら、二人で決めましょうか」
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