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声になったのか、音をちゃんと紡げたのかすらわからないまま、溶けだしそうな理性を絞って眞洋を見つめる。ぞわりと背筋を這い上がる感覚も、眞洋が与えるものは全部好きだなと思う。
「……っ、」
キス好きだな、とか、眞洋は僕が甘いと言ったけど、眞洋だって甘い、とか。色々と考えながら、眞洋が与える「気持ちいい」感覚をただ受け入れた。
「ふぁ、…ぁ、あ」
吐息を孕んだ空気が離散する。唇から漏れる濡れた声に理性はもうぐずぐすに溶けてしまっていた。
「っ、だめ、また、っ」
体の奥から湧き上がる熱がもどかしくて、はっと息を吐く。晒された下半身はもうベトベトで、汗なのか、そうじゃないのか僕には分からない。
いま、自分を支配する「気持ちいい」感覚を追うことしかできない。
「眞洋、っ、あ、」
熱い、気持ちいい、でも苦しい。
眞洋に身体を揺さぶられる度に、濡れた音が鼓膜を揺らして、体が跳ねる。持ち上げられた足に、眞洋が赤い跡を残していくのをぼやけた視界で見ていた。
「くすな…っ」
痛かったら言って頂戴と眞洋は心配そうに言っていたけれど、痛くないし、むしろ気持ちが良くて仕方がない。
こんな事は初めてで、ましてやキスをする事すら眞洋が初めてだ。僕の体を押しひらく眞洋の熱が理性を焼き切っていくのを抗う術がない。
「きもち、い、」
「……っそう、私もよ」
あぁ、本当に
「すき…」
呂律も怪しいまま、眞洋、眞洋と名前を呼ぶと、ふわりと笑いながら唇を塞がれた。持ち上げられた足にかかる眞洋の手がするりと滑り、骨ばった腰を掴んだ。
「ん、ぁ!」
「どろどろに、溶けそう、ね」
ほら、と腰を引かれて声が漏れる。意地悪そうに笑う眞洋に手を伸ばすと、その手に擦り寄るように眞洋が顔を寄せて手のひらに口付ける。
「………っ、あ、ぁ、」
ガクガクとゆさぶられて視界に光が走る。開ききった口からはもう声にならない声しか出なくて、行き場のない手で必死にシーツを掴んだ。
ギシギシと軋むベッドの音、眞洋の荒い息遣い、濡れた音が鼓膜を揺らして視界に走る光と、抗えない感覚に頭が真っ白になった。
明るい。
瞼を刺す眩しさにゆっくりと目を開けた。
「……朝?」
あれだけどろどろになっていたのに、体が綺麗になっていて首を傾げながら体を起こした。
「….…」
体の節々が痛むし、なんだか頭が重い。まだ体に熱がこもっているみたいで、またベッドに横になった。
隣で寝ていたはずの眞洋がいない。
「あぁ、おはよう。くすな」
寝室の扉が開き、眞洋が顔をのぞかせた。何時ものハニーブラウンの髪に、紫色の瞳。上半身は何も身につけず、スウェットのズボンだけ履いて。
「体、大丈夫かしら」
「…すこしだけ、あつい」
「あら。無理させちゃったわね」
眞洋がベッドに腰掛けてギシリと軋む。僕の頭を撫でながら、少しだけ困ったようにそういうものだから、僕は眞洋の手をつかみ、違う、と呟いた。
「違う。僕は嬉しい。眞洋が僕を求めてくれるなら、嬉しい」
「……やっぱり貴方は男前ね…」
くすりと笑い、ねぇ、と言葉を続けた。
「私の印を、刻んでも?」
「うん。僕は眞洋のものだ。眞洋だって、僕のものだろう」
「…ありがとう」
眞洋は掴んでいた僕の手をゆっくりほどきながら指と指を絡めて優しく握り返した。
「好きよ。くすな」
「僕も」
露わになっている僕の胸元に、眞洋が唇を寄せる。じわりじわりと熱が集まって、そこに意識が集中してしまう。
「っ、」
焼けるような熱さに絡まった眞洋の手をぎゅっと握った。
「―――……、眞洋…?」
熱さが一瞬で引いて、いつの間にか閉じていた瞼を開けると、僕の胸元から顔あげた眞洋の目からハラハラと雫が溢れていた。
「…っ!?」
「あぁ、いえ、違うのよ……。これは、勝手に…」
繋がれていない手で、眞洋が涙を拭う。後から後から溢れている涙に、僕は首を傾げながら重い体を起こし、繋がっていない手で、眞洋の手に触れた。
「…安心、した?」
「―――…えぇ、そう、ね。私、……あぁ、やだ。止まらないわ」
「泣けばいい。眞洋は、涙も綺麗だ」
親指で目尻を撫でて、溢れる涙を拭った。
「……ふふ、くすなって、ほんと…」
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