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恋って何?
「君は恋に恋してるだけだよ」
翌日再び彼に逢いに行くとそう言われた。
恋?
「君は俺を好きじゃないでしょ?」
好き?
好きって何だろう。
僕は小さな頃からずっと、王子様に出逢って恋に落ちてそのまま結婚して幸せになるって信じていた。
運命の番である王子様が全部教えてくれる。
幸せにしてくれるって。
「そうだけど、でも、貴方は僕の王子様だ」
王子様の相手は運命の番である僕に決まっている。
僕が貴方のお姫様だ。
「王子・姫で例えると、俺には既に心に決めたお姫様が居るよ。もしたとえ先に君に逢っていたとしても、俺はあの人を選ぶ。あの人じゃなきゃダメなんだ。本気で愛したら、その人が運命の人。俺はそう思ってるよ」
王子様が僕に靡かなかった理由。
それは既にお姫様が居たから。
もしかして、初めて出逢った時隣に居た人だろうか。
王子様しか見えてなかったから眼中に無かったが、王子様が選んだ人なんだ。素敵な人に決まっている。
「君も誰かを好きになって、恋に落ちたら分かるよ。その人が運命の相手だって」
最後にごめんね、もう一度謝罪の言葉を口にすると、王子様は僕の前から姿を消した。
恋か。
恋って、どうやってするんだ?
好きねぇ。
好きな人。
お母様・お父様・友達・家庭教師や先生、皆好きだ。
でもそれは恋愛感情ではない。
ていうか、考えた事もなかった。
王子様と結婚して幸せになると決め付けていた自分にとって、普通の恋愛なんて選択肢になかったのだ。
取り敢えず世間一般で言う恋愛から学んでみよう。
様々なドラマ・映画・マンガ・アニメに目を通した。
色々な人から恋愛話を聞いてみた。
けれども、やはりよく分からなかった。
好きには色々あるらしい。
側に居るだけで感じる感情も安心・ドキドキ・胸が痛い・苦しい・切ない・幸せと様々だ。
好きになるシチュエーションも外見も性格も人それぞれだった。
調べれば調べる程難しい。
悩んでいると、余り深く考えちゃダメよ?母に諭された。
恋とはいつ落ちるか分からない物。
いつの間にか好きになっている場合もある。
チカはまだ若いのだから急いで相手を探さなくても大丈夫よ。
ゆっくり焦らず貴方の運命の人を探しなさい。
あんなにも恋焦がれていた運命の番にアッサリ振られた不甲斐ない息子に呆れもせず優しく微笑んでくれる母に
「ありがとう」
嬉しくて涙が溢れた。
小さな頃から運命の番と結婚出来るって決め付けて教えてごめんね。
私がそうだったから貴方もそうなるって思ってたの。
本当にごめんなさい。
綺麗な瞳から透き通った雫を零しながら謝られて
「ううん。母様は何も悪くないよ」
母の涙をハンカチで拭き取りながら微笑んだ。
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