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寝不足にはご用心①
ふとした日常の話
学校での、獅子原理佳の小さな失敗
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とある平日の午後。さり気なく腰を庇いながら、手に持った教科書の英文を読む。
昼食後の授業は居眠りしている生徒も多く、少し羨ましい気分になった。まさか教師である自分が授業をサボって眠るわけにはいかず、教科書に隠れて欠伸を噛み殺す。
もう若くはないのだし、普段は翌日に支障をきたす生活はしない。テスト前や、特別な時期でない限り、いつも決まったスケジュールで過ごすよう心掛けている。
けれど昨日は、久しぶりにウサギが家に来て「一緒に寝たい」なんて言い出したから、理性など遙か彼方へ投げ捨ててやった。気づけば深夜とも朝方とも言える時間になっていて、肝心のウサギには朝から罵詈雑言を浴びせられてしまった。
──まぁ……正確には『言わせた』のだけれど。
学生の頃から『何を考えてるかわからない』と言われてきた俺が、たかが高校生相手に情けない。社会人としても褒められた行動ではないだろう。
しかしながら、どれもこれもウサギが悪い。
普段は生意気なくせに、こちらの都合も考えず突然可愛らしく強請ってくるから、悪い。
舌ったらずな口調で『リカちゃ……もっと、お願い』なんて言われてしまえば当然、頑張る意外の選択肢は消え失せる。これでもかと言うぐらいに啼かせたくなる。
自分自身では淡白だと思ってたのが嘘のように、終わってもすぐに欲しくなる感覚。それは何か中毒性のあるものに依存することと似ていて、自制しようとしても不可能だ。
因って、昨日の一件は俺だけの所為ではなく『お互い様』だと思う。
そんなにも魅力的なウサギはどうしているかな、と教科書から視線だけを向ける。誰にも悟られないように確認すると、そこには俺を見つめるウサギがいた。
本人はさり気なく見ているつもりだろうけれど、明らかに感じる熱い視線。
潤んだ瞳に僅かに染まった頬。少し開いた唇は、まるでキスしてくれと誘っているように赤く、なぜか震えている。
はっきり言って可愛いが酷い。
身長は平均並みの、どう見ても正真正銘『男子高校生』である。しかし、俺にとっては世界で1番に可愛い。もはや、可愛い以外の言葉が見つからない。
──やっばぁ……可愛い可愛い、俺の慧君。
そんな事を考えてる時だった。
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