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10年後の君へ

「やっと、やっと追いついた。もう年の差はないし、お互いの立場もクソもない。誰も俺たちの邪魔はできない」  1人の時間は余りに長く暗くて、けれど耐えられたのは全てこの為。  リカちゃんと同じ場所で終わりを迎える為に教師になり、リカちゃんが俺を庇った時と同じよう、階段に背を向けて立つ。 「俺から逃げられると思うなよ。お前は俺だけのものなんだから」  目を瞑って深呼吸。ここから俺を庇って落ちたリカちゃんは、すごく痛かっただろう。  リカちゃんの綺麗な黒髪が血で濡れ、赤い水溜まりで汚れた肌は、葬儀の時には綺麗に戻っていた。  あれだけ血を流したのだから、想像もできない痛みがあるに決まっている。それなのに全く怖くなくて、逆に嬉しいと思ってしまう俺は変なのかもしれない。  リカちゃんの頭がおかしかったように、俺も感化されたのかもしれない。 「悪いけど、リカちゃんと違って俺は待つの大嫌いだから」  リカちゃんの為に用意した指輪を握りしめ、あの日と同じ場所であの日と同じようにリカちゃんの元へ。今日俺が締めているネクタイも、あの日リカちゃんが身に着けていた物と同じだって知ったら、お前は笑うだろう。  あの甘ったるい笑顔と声で『やっばぁ……慧君、それはやりすぎ』って褒めてくれると信じている。 「やっと。やっとリカちゃんの所に行ける」  ふっと意識が途絶えて、誰かが叫ぶ声が聞こえて。  その呼び名が『兎丸先生』なのか『獅子原先生』なのかわからなくなって、俺はもう自分が誰なのかもわからなくて。  そして次に目にするのは……。 「言うこと聞けない悪い子には、お仕置きって言ったろう?ねえ、慧君」  あの日と変わらず妖艶に笑う、俺だけの先生がいる。永遠に俺だけのものになった、リカちゃん先生がいるはずだ。 《10年後の君へ*END》

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