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1. He Loves 5
唇を離した途端、熱く蕩ける中が俺を奥へと引きずり込むようにうねりだす。ああ、持って行かれる。
「あ、あっ、イキそう……!」
穿つように激しく何度か腰を動かしてから、達する寸前に引き抜こうとしたその時、七瀬は必死になって俺を振り返った。
「あ、ダメ、中で出して……ッ」
涙目で懇願するその顔を見た途端に理性は全部ふっ飛んでしまう。俺は七瀬に覆い被さり腰を押しつけたまま強く抱きしめて、その最奥で欲をぶちまけていた。
「ああぁ、ん、あァ……ッ!」
俺を締めつけるそこは、最後の一滴までをも絞り取ろうとするかのようにビクビクと何度も蠢く。荒い呼吸音がふたつ、ガランとした教室に響いていた。
七瀬とするセックスは悔しいほど気持ちいい。それは、身体を重ねる度に俺のことが好きだというのが伝わってくるからかもしれない。
「カイくん、大好き……」
うわ言みたいにそんなことを口にして、七瀬はへへ、と力なく笑う。その色香を伴うかわいさが、全くもって無駄だと思う。
お前、そんなにかわいくなくていいんだよ。
心の中でそう呟いて、熱をすっかり吐き出したものを七瀬の中からずるりと引き抜けば、白濁がトロトロとこぼれて細い脚を伝い落ちていった。
「うあ。カイくんの、あっつい。感じる。また勃ちそう……!」
「ほら、制服が汚れるだろ」
股の間を見て嬉しそうにしている七瀬に呆れながら、俺は慌てて太股に手を添えて垂れてきたものを掬ってやる。
カバンから取り出したポケットティッシュで七瀬の脚を拭ってから、掌に付いたものとロッカーや床に飛び散った分も残らず拭き取っていく。こんなところでセックスしてるだなんて知れたら、大問題だ。
しかもここ、男子校だからな。
「カイくんのそういう甲斐甲斐しいとこ、痺れる。これ以上好きにさせないで……!」
「すみませんが、好きにならないでもらえますか」
丁寧に断ったつもりが、なぜか七瀬は顔を輝かせて歓喜の声をあげる。
「ひゃああ。カイくんのツンデレ、キュンキュン来る!」
「デレてないし」
──疲れる。
行為特有のにおいがまだ残る教室で互いに衣服を整えると、スッキリした顔で七瀬が口を開いた。
「クラブ棟でシャワー浴びて帰ろうかな。ああでもやっぱやめよ。カイくんの精液流すとか、もったいなくてできない………!」
「残らず洗い流せバカ」
どこまで変態なんだ。呆れながら教室を出ようとすると、前を歩く七瀬が不意に振り返る。何か言いたげな表情には物憂げな影が射していて、いつもと違う様子にドキリと心臓が大きな音を立てた。
「何だよ」
クリクリした瞳で俺をじっと見つめながら、七瀬は珍しく遠慮がちに口を開く。
「……カイくん、いつか俺と付き合ってね」
惑うように揺らめく瞳は、落ちていく陽の光を反射してゆらりと茜色を映す。
口を開こうとしたその瞬間、「シャワー浴びてくる!」と言い残して七瀬は軽やかに廊下を駆け出していった。
七瀬は知らない。
俺がこんなことをしたいと思うのも、心配だからそんなにかわいくなくてもいいと思うのも、七瀬だけだということを。
入学式のときにした告白の返事を未だに待ち続けている七瀬の後ろ姿は、もう小さくなっていた。窓の外に広がる夕暮れを眺めながら、俺は今日何度目かもわからない溜息をつく。
口をついて出るのは、聞かせることのない独り言。
「七瀬。俺は、お前のことが──」
"He Loves" end
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