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7. the Way You Are - side M - 6

「……いいよ」 その唇からこぼれた赦しの言葉は、悲しみに満ちていて。 俺はたまらず思い切り抱きしめていた。 華奢な身体がたどたどしい呼吸に合わせて腕の中で小さく動いて、背中に回った腕が縋りつくように俺を掻き抱く。すん、と鼻を啜る音に、なぜだか俺まで泣きそうになってしまう。 壊れものを抱くように、俺はかわいい李一くんを大切に大切に包み込む。 落ちていく陽の射し込む中、愛おしくてたまらない時間がゆっくりと過ぎていった。 バンド演奏の賑やかな音が、ここまで響いてくる。しばらく華奢な背中をさすっていると、やがて泣き腫らした顔を上げた李一くんが、おもむろに口を開いた。 「カレー、食べたかったんだけど」 なんてかわいいことを言うんだろう。今すぐ俺が李一くんを食べちゃいたいぐらいだ。 「俺、カレー作るよ。後夜祭が終わったら、李一くんのおうちに行っていい?」 お赤飯は、今度でいいしね。 俺を見上げる目尻は涙に濡れて、ほんのりと赤くなってる。 え、何それ。すごく色っぽいんだけど。 「甘口、食べたい」 「ん、わかった」 俺は何となく気づいてる。李一くんの食べ物の嗜好が少し子どもっぽいのは、記憶を手繰ってるからかもしれないって。 お母さんの作ってくれた料理の味。 もしかすると、李一くんが俺を傍に置いてくれてるのは、お母さんの面影を追ってるだけなのかもしれない。 でも、それが李一くんと一緒にいられる理由になってるんだとしたら、俺はそれでも構わないと思う。 「李一くん、大好きだよ」 そう言って両肩を掴んで軽くキスをする。すっかり暗くなった教室で、李一くんは潤んだ目で戸惑いながら俺を見つめてる。 大丈夫。俺、李一くんから離れないからね。 窓の外に目を移せば、グラウンドの向こうに見えるのは人だかりと燃え上がる炎。 後夜祭を締めるファイヤーストームが始まったんだ。 李一くんはクラスの委員長で、この学校の王子様だ。俺がいつまでもこんなところに引き止めておくわけにはいかない。 「俺、着替えるから。先に行ってて」 「着替えなくていい」 「えっ」 「その格好で、うちに来い」 「えっ、えっ」 李一くんが俺の手を取って引っ張る。いや、だって俺、さすがにこれで外へ出るのはつらいよ? 「あの、パンツは履いてもいいよね?」 「駄目」 刺すような視線に射抜かれれば、もう何も言い返せない。 「そのままうちに来て、その格好でヤるからな」 「え、ええっ」 いや、セックスはしたいんだけど、よりによってこのままなの? でも、そんな李一くんは、何だか少し嬉しそうで。 喜んでもらえるならまあいっか、なんて思いながら俺は大好きな人と手を繋いで教室の外へ飛び出していった。 the Way You Are - side M - end

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