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8. by Ourselves 1
二日間に渡って開催された文化祭が、無事に閉幕を迎えた。
ミスコンテストで準優勝という何とも微妙なポジションに収まり、優勝賞品カレーチケットクラス人数分を逃した俺は、結局李一くんに連れられて女装したまま後夜祭のファイヤーストームに参加することになった。そしてそれが終わると俺たちは誰よりも早く学校を飛び出して、李一くんのマンションへと向かっていた。
学校から徒歩圏内だからすごく近いんだけど、それでもこんなワンピース姿で、しかもノーパンで外を出歩くのはもうめちゃくちゃ恥ずかしい。
いや、それよりももっと俺をドキドキさせてるのは、校門を出てから李一くんが手を繋いでくれてることだったりする。
歩くのが妙に速くて、手を繋いでいるというより引きずられてるという表現の方がしっくりくるんだけど。
そもそも李一くんと俺は絶対的な主従関係で結ばれてるわけで、けっして手を繋いで歩くような甘い仲じゃない。
だから、こんなところを知ってる人に見られて、もしも俺のせいで李一くんに変な噂が立ったりしたら、申し訳なさすぎてどう落とし前をつければいいかわからない。
いや、なんか言い方が極道っぽくなっちゃったけど、それにしても李一くんと俺はクラスの委員長と副委員長という立場なのに、後夜祭が終わった途端学校を抜け出してきて大丈夫なんだろうか。
「李一くん、文化祭の後片付けは?」
「実行委員に任せておけばいい」
「そ、そうだね」
さすが王子様。片付けなんて下々の者がすることで、李一くんがその場にいないところで文句を言う人は誰もいない。
まあ、俺は何か言われるかもしれないけどそれはもう仕方ない。だって、俺は李一くんに逆らうわけにはいかないから。
手を引かれるまま李一くんの住むマンションへと続く道を歩いているうちに、俺は大事なことを思い出す。
「あ、カレーの材料、買わないと」
「あとでいい」
えっ? だって、あんなに食べたがってたじゃないか。
携帯電話を取り出して時間を確認すれば、午後八時を過ぎてる。近くで買い物をして帰ればいいのに。まあ、俺もこの格好でスーパーに入るのはかなりの勇気がいるんだけど、何だか感覚が麻痺してきてて、もはやそのぐらいの辱めならどうってことはない。
それでもスーパーへと足を向ける気は全くないらしく、そうこうしてるうちに李一くんが住む二十五階建の高級マンションに辿り着いてしまう。
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