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8. by Ourselves 2
エントランスホールに入るといつもにこやかな笑顔で迎えてくれるコンシェルジュのおねえさんの姿が見えない。そうか、この時間はもう帰ってしまってるんだ。
李一くんはまだ俺と手を繋いでくれてる。恐る恐る華奢な手をそっと握り返してみると、胸の高鳴りが一段と大きくなる。
俺の前を歩く李一くんがどんな表情をしてるのかは全然わからないけど、この状況がすごく嬉しい。
三ヶ所のオートロックをくぐり抜けて李一くんの住む部屋に辿り着けば、李一くんはすぐさまカードキーで扉を解錠して俺を中へと引っ張り込んだ。引っ張られるまま慌ててパンプスを脱いで玄関を上がると、リビングでも浴室でもなく寝室へと連れて行かれる。
ええっ! いきなりセックスするの?
「あのっ、シャワー、浴びた方が」
「うるさい」
だって俺、今日は結構汗をかいたから、こんな身体でセックスしたら李一くんが汚れちゃうよ。
戸惑っていると突然李一くんがくるりと振り向いて、俺の両肩をガッチリ掴んできた。
「わ、李一く……っ」
勢いよくベッドに押し倒されて、スプリングの弾みで身体が小さく跳ね上がる。心地いい重みを預けてくる李一くんのぬくもりに、俺の心臓はバクバクと高らかに鳴り響く。
えっ、待って! この微妙な空気。俺、もしかして。
このまま、李一くんに挿れられちゃう流れじゃない?
「湊人」
至近距離で囁かれるその声は、心なしかいつもより艶っぽい。
「り、李一くん……?」
ワンピースの裾に差し込まれた手が、もう勃ち上がってきている俺のものをダイレクトに包み込む。
わあ、ノーパンって便利だね。パンツを脱ぐ手間が省けるよ。じゃなくて!
「もう勃たせてんのか、変態」
「ご、ごめんなさ……」
一瞬だけ、唇が触れ合う。李一くんがくれたかわいらしいキスに、さっきからうるさく鳴ってる心臓はもう爆発しそうだ。
けれど、李一くんはすぐに起き上がって俺から身体を離してしまう。全身で感じていた優しい重みがなくなって、それと同時に俺の半身を握り込んでいた手もするりと離れていった。
突然温かさを失った身体が、じりじりと熱を燻らせる。放置されることで却って疼いてしまうなんて、やっぱり俺は変態なんだと思う。
そんな俺の反応を知ってか知らずか、李一くんはサイドボードに手を伸ばして、そこに置かれているリモコンのスイッチを押した。
枕元のブラケットが点灯して、頭上の壁を仄かに照らし出す。柔らかな光に浮かび上がるのは、膝立ちで俺を見下ろす李一くんの姿。
高貴なその瞳は、溢れんばかりの情欲に濡れてる。
ああ、俺。
今なら、李一くんに抱かれてもいいかも。
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