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9. Crush on You 5
「あ、待って! ま……ああッ」
容赦なくスイッチを入れられて、鈍い振動音を立てながらリングが震えだす。強制的に与えられる刺激にうずくまって悶絶すれば、伏せた頭上から無情な声が聞こえてきた。
「お腹すいてるんだろ。それ、付けたままで食べろよ」
えええ。あんまりです。
思わず涙目で顔を上げると、愛おしい王子様は高貴な微笑みを浮かべて俺を見下ろしてた。
こんなときの李一くんは、とてもいきいきとしてる。
ああ、なんてきれいなんだろう。
目を奪われる俺の顎をグッと掴み上げた李一くんは、嬉々とした表情で口を開く。その唇が紡ぎだすのは、全くもって穏やかでない言葉だ。
「随分気持ちよさそうだな。これが好きなのか」
いやいや、そんなわけないでしょ。
だけど、ぶるぶるとした不自然な振動は頭のてっぺんまで伝わって、俺の理性をぐちゃぐちゃに掻き混ぜていく。この感覚が気持ちいいのか何なのか、実は俺にもわかってない。わかることはたったひとつだけ。
「……好きです」
満足げに微笑む李一くんに、俺は必死に訴えかける。
違うんだ。俺が好きなのは、こんな破廉恥なグッズなんかじゃなくて。
「李一くんが、好きです」
自分でもおかしいと思うぐらい、大好きでたまらないんだ。
か細い声でやっとそう告げれば、李一くんは大きな目を見開いて俺を喰い入るように見つめる。艶やかな頬にサッと朱が差したのを、俺は見逃さなかった。
「──バカ」
そんな呟きと共に与えられるご褒美は、唇が触れるだけのかわいらしいキス。
どくんと高鳴る心臓に追い打ちを掛けるように、半身からの刺激が一段と強まった気がした。
やっぱり、もっともっと李一くんが欲しい。
「ほら、来いよ」
王子様から差し伸ばされた手を迷わず取って、俺は恐る恐る床に足を付けた。
身体が言うことをきかない。ふらつきながら立ち上がって、李一くんに導かれるままに扉へと向かう。
高貴な後ろ姿は、カーテンの隙間からこぼれる朝陽を浴びて、光のヴェールを纏ったように華やかに煌めく。
李一くんは本当にきれいだなあなんて思いながら、俺は変な感覚で虚ろになっていく頭で、朝食の前にこのオモチャを取ってもらう方法をどうにか考えようとしていた。
"Crush on You" end
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