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10. Love You, too 1

キラキラとドーム越しに水面を反射する陽射しの眩しさに目を細める。 今日の日直当番にあたっている俺は、空腹を覚えながら四時限目の授業が終わったばかりのプールサイドでビート板を乗せた台車を倉庫へと片付けていた。 この学校では、室内プールで春から秋にかけて不定期に水泳の授業が行われる。気候に関係なくプールが使える環境は水泳部にとっては喜ばしいものなのかもしれないが、俺にとっては全く望ましくはない。 その理由はあえて言及しないが、とにかく水着に着替える度に余計な煩わしさが増えるばかりだ。 それにしても蒸し暑い。これは気候の問題ではなく、どちらかというと精神的な要因が大きい。 「──おい、七瀬。いい加減、出て来いよ」 聞こえる程度のトーンでそう声をかければ、倉庫の陰からぴょこんと人影が飛び出してくる。それは、紛れもなく俺の学校公認ストーカーを名乗る男子生徒のものだった。 「へへ、ばれてた?」 「アホか」 チラチラとあからさまにこちらの様子を窺っておきながら隠れているつもりだと言うのだから、全くもって呆れる。 「だってカイくんのこと、待ち伏せしたかったんだもん」 バスタオルを片手に持ちながら、七瀬は恥ずかしげにそんなことを口にする。いつもは歩く度にふわふわと風に揺れる癖っ毛が、今は濡れてハタハタと水が滴っている。シャワーを浴びた後にきちんと拭いていないんだろう。 黙ってさえいれば天使のように愛らしいこの同級生は、そのおかしな性格が災いして外見と見事に相殺されてしまっている。だから、俺にとってはただのうっとうしいストーカーにしか見えない。 そうだ。いくらかわいい顔をしていたところで、七瀬はただの変態だ。それを俺はよくよく肝に銘じておかなければならない。 それにしても、と俺は華奢な身体に視線を流して小さく溜息をつく。緩いハーフパンツタイプの水着を履いているだけの姿が、無駄にエロいことこの上ない。こいつがこの格好で人前に出ているだけで気が気でないなんて、この室内プール特有の蒸し暑さのせいで俺の頭はイカれてるんだと思う。 「カイくんって、ホントにイケメンだよね。思わず見惚れちゃう。水着って、なんか裸よりエッチだし!」 「デカイ声を出すなバカ」 一人で騒ぎ出す七瀬を置き去りにして、溜息をつきながらプールサイドの階段を降りる。外へ続く扉を開けば、クラブ棟の入り口が見えた。 更衣室はグラウンドの片脇に連なるこのクラブ棟に入っている。早く着替えて腹を満たすことだけを考えよう。

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