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10. Love You, too 6
「カイくんとエッチするの、好き……」
独り言のようにそう呟いて、七瀬はふわりと微笑む。満足げな表情が愛くるしくて、まだ小さく蠢いている中に包まれた半身がどくりと脈打つ。
駄目だ、色々ともたない。
「……七瀬、お前」
こんな状況で俺の口をついて出るのは、実にどうでもいい台詞だった。
「もうちょっと性欲を抑えられるようになれ」
自制心を抑えられないことさえ七瀬のせいにしてしまう俺は、全くもって酷い人間だと思う。
いつもの口調で「そんなの、無理に決まってるよねっ」ぐらいは言うかと思ったのに、そうではなかった。
七瀬は俺を窺うようにじっと見つめて、やがてこくりと頷く。
「……うん、わかった」
やけに素直な返事だった。いつになく殊勝な態度が多少気にはなったが、それには構わずにまだヒクヒクと動く七瀬の中から半身をずるりと引き抜く。小さく喘ぎ声をこぼす唇は濡れて艶かしく光っていた。
ああ、このまま隣のシャワー室に直行だな。
「立てるか」
「ん、平気」
立ち上がって手を差し出せば、煌めく瞳でうっとりと俺を見つめてくる。
「やっぱりカイくんはツンデレだと思う。ツンの間に絶妙に挟み込まれるデレに興奮する……!」
「アホ」
つい引っ込めようとした手をがっちりと掴み取って、立ち上がった七瀬は素早く水着を履いた。
「ほら、これでカイくんの精液が出てきても大丈夫っ」
「得意げに言うな、アホ」
いくら顔がかわいくても、やっぱり中身はただの変態だ。呆れながら背を向けて更衣室を出ようとすると、後ろからふと真剣な声が聞こえてきた。
「俺、カイくんに好きになってもらえるように頑張るね」
どんな顔でこんなことを言っているんだろう。確かめるのが怖くて、俺は扉に顔を向けたまま足を止める。
「……それ以上頑張るなって」
俺が我慢できなくなるから。
その言葉はやっぱり口にできずに呑み込んでしまう。
「ああん、カイくんの意地悪っ」
いつもの調子で後ろから絡みついてくる腕を振り解きながら、俺はようやく振り返って七瀬の顔を見る。
クリクリとした瞳はいつも俺しか見ていない。
引き戸に手を掛ければトン、と床を蹴る音がして飛びついてきた七瀬を慌てて片腕で抱きとめる。
「でも、大好き!」
ふにゃりと押しつけられる唇は、俺と同じ体温だった。
「──はいはい」
磨りガラスの外には幸いなことに人の気配がない。
さっき七瀬の耳元で囁いた言葉が聞こえていなかったことに安堵しながら、俺はゆっくりと扉を開けた。
"Love You, Too" end
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