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11. My Heart Aches 5
「なんか、しっくりこなかったんだけどっ」
七瀬の中に出した分をとりあえず掻き出してティッシュでしっかりと受け止めてやれば、浮かない顔でそんなことを口にする。何のことかと思えば、またもやコンドームネタだった。
「なんかさ。ベタベタになるのがエッチの醍醐味なのかも。だから、コンドームはもう捨てよっかな。使い道もないし」
一体何がどうなって醍醐味になるんだ。引っ張って外したそれを中身がこぼれないようにひと結びしてから、七瀬は更にとんでもないことを口にする。
「そうだ。ローションでベタベタになってエッチするとか、楽しそうじゃない? なんか、想像するだけで興奮してきた……!」
「アホか」
「ね、今度そういうのしようよ。ローションならリイくんが回してくれるし」
そういう変態プレイに俺を巻き込むのはやめてくれ。
さらっと聞き流しかけて、踏みとどまる。今、何て言った?
「李一が?」
俺の顔色を見て、途端に七瀬が困惑した表情になる。
「だって、エッチする時はこういうの使わないと痛いからって、リイくんがいっつもくれるんだもん。カイくんと使えばいいって」
──あいつめ。七瀬を煽って、一体何が目的なんだ。
「リイくんは、俺のこと応援してくれてるだけだよ? 俺、リイくんのこと大好きだし」
大好き、という言葉にいちいち引っかかる自分がどうかと思う。
『カイがその気じゃないのなら、僕が七瀬をもらうよ』
何を考えてるのかわからない李一のあの発言がまだ頭の片隅に残っていて、正直いい気はしない。
そんな俺に、七瀬は言い訳がましく口を開く。
「リイくんのことは、友達として大好きなんだけど。カイくんのことは、えっと」
必死に弁明されるのが、却って癪に障る。そうだ、七瀬は別に俺が特別好きってわけじゃないんだ。
でも、まだしばらくはそれに気づかないでいてほしい。そんなことを考えるなんて、全く俺はどうかしてる。
七瀬は掌で胸を押さえながら、俺をそっと見上げた。泣きそうに潤んだ瞳は儚げに揺らめいて俺を映し出す。
「……カイくんのことを考えると、俺、ここがドキドキして、ぎゅっと苦しくなるんだよね」
カイくんのことは、そういう"大好き"。
そう囁いて、七瀬は唇を重ねてくる。
ああ、七瀬。
お前の大好きがそれなら、俺のも──。
チクリとした胸の痛みをキスでごまかしながら、俺は今だけ七瀬を優しく抱き寄せる。
"My Heart Aches" end
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