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 とっても怒っているような気がするのは、気のせいか?  何か、自分は彼にとんでもないことを仕出かしたのだろうか?  夜勤に出るときは自分が食べた食器の片付けもしたし、洗濯の取り込みも行った。隆司の部屋で起床したときに目覚まし時計以外、特別何か触った記憶は無い。今日はそれほど急変もなかったため弁当も忘れず食べることができた。水分も取れた。トイレにも行けた。  出掛ける前から今までを振り返ってみても思い当たる節はなくて、首を傾げつつ携帯を仕舞おうとして、複数の受信メールに気付く。 『遅い』 『朝食の仕度してある』 『とっとと帰って来て、メシ食って寝ろ』  開いたメールは全て同じ送り主から。 『待ってる』  ぶっきら棒のようだが、ほっこりと胸の奥があたたかくなる。  彼のひとつひとつの心遣いに救われる。  表情を綻ばせ、しばらく携帯電話を眺める。  ──ああ、そうだ。 『「ごっこ」じゃない、家族になりたいな』  たとえ世間一般から見れば、はみ出していたとしても。  血の繋がりがなくとも。  同性同士でも。  ──……一緒に、居たい。  隆司と。  ただ、彼だけが居てくれれば、何も要らないから。  真摯に自分を心配してくれ、脆(もろ)く崩れそうなときも力強く支えていてくれる。  それだけに、彼には嘘をつきたくない。  向き合わなければ、ならない。  いつまでも絡まっている、過去の柵(しがらみ)に。  キンと冷えた空気を肺一杯に取り込む。  無意識に震える、体。  握りこむ、左手。  未だ付けることに戸惑うが、これを与えてくれた隆司の想い。  ──自分は、独りじゃ、ない。  逃げるのは、もうやめよう。  すべてのはじまりは、ココではない。  あの、ごみ溜めのような……いや、それ以上に酷い、あのちいさな一室から。  それが、自分の基(もと)。  迷子であった一磨が見出した一筋のヒカリに、地平線へと沈みかけている三日月はやさしく微笑んでいた。  左腕の古傷が少し、疼いた。  「っあ、あの、隆司……?」 「なんだ」 「ち、近い、よ……」  背後に彼の体温を感じ、一緒の毛布に包まれる。  恥ずかしさで、全身から火を噴きそうだ。  あれからすぐに隆司は海岸に迎えに来てくれ、自宅に連れ戻された。誰も見ていないと絡められた指は、いつかと変わらずネツを持っている。 「冷えてる」 「っン、あ、シャワー浴びれば、」  大丈夫、だから。放して。  耳元で低く囁かれる声に情事の最中を思い起こさせられ、背筋が痺れる。  どこもかしこも、彼の匂いに抱き込まれて身動きが取れない。距離を取ろうと捩る身体も、逆に隙間ないほどに密着される。闇雲に動かす足も意味なくシーツに皺を刻むだけ。

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