59 / 63

14

 次々と花開いていく快美感に我を忘れる。 「っあ、やぁっ、ま……っふ、」  直に性器を包まれて仰け反る。  とっくに知られている弱みをいじめられれば、ひとたまりもない。  パサパサと髪を散りばめる微かな音も、濡れた音に掻き消される。  急速に登りきった頂の後も、尚責められる。  重ったるい水音と荒い息。  静かな室内によって殊更響き、聴覚からも侵食される。  踊らされる。  内部を蠢く男の指に。  男のすべてに。  シーツに深くシワを描く扇情的な姿に、男が無意識に口角を舐め上げたとは知らず。 「も、もぉ……」  嗚咽ながらに音を上げても、やはり許されず。  増やされた数に噎び泣く。  思い通りに動かせない腕に焦れつつ、震える指先を男の頬へ。  包まれると同時に掌に口づけを落とされ、次いで喘ぐ口唇にも。  歯列を、口蓋を、頬の内側を。  絡められ、痺れる舌を甘噛みされる。 「……ぁ、」 「一磨」  当てられる質量。 「っぁああ……あ、あ、あぁ……っ!」  息を飲んで涙の膜を張った目を見開いた時は、遅かった。  埋め込まれる灼熱に崩される。  知らしめられる。  グズグズに蕩けた内部にある存在を。  意図せず吐き出した欲を、気ままに指で辿られ腹に広げられる。  その感触にすら、漏れる声。 「りゅ……ン……ぁは……っ」  引き攣りながらも息を吐く一磨を、男は待つ。 「ぅじぃ……」 「……ん?」  したたる汗にも肌を震わせて。  ちいさな囁きも、確かに掬ってくれる。  油を差したようにギラつく瞳を見上げて。  もどかしく、わななく唇を触れ合わせる。  彼が見出してくれなかったら、今の自分は──居ない。 「あ、んンッ……ありが、と……俺を、見つけて、くれ……ぁっゃあぁあああッ!!」  一気に奥まで突き入れられ、言葉を見失う。  コレ以上は無理なのに。  膨らんだ嵩に、ナカをいっぱいいっぱいにされる。 「……クソッ!」  漏らされた吐息は耳で拾えず、渦に飲み込まれる。  振り絞った痩身を強く抱きこまれ。 「あんた、本当に……」  送り込まれるリズム。  なす術はなし。 「あ、あ……あぁぁ……」  再び果てても、止まぬ律動。  引き戻される、弾けたはずの意識。  時折探るようにして回される腰に、当の昔にオーバーヒートした身体の存在を忘れる。 「っぁ……あ……あ……」  上り詰めたはずなのに、グズグズに溶けた内部をさらに掻き回される。  重点的に攻められるシコリに声もない。  どこもかしこも男のニオイに包まれ、酔う。  遠くで息を詰めた声を拾い、奥で弾ける飛沫(しぶき)。 「ああぁ……」  掠れて尾を引いた余韻をも楽しむかのように、掻き抱(いだ)かれる。  ──ツヨク。  しゃくり上げる喉を宥めるようにして落とされる、触れるだけの口付け。 「一磨……」 「ン……りゅぅ……っ……」  甘ったるい名残を盛大に引き摺って、未だ抜け出せないヒクツキに恐れを為す。

ともだちにシェアしよう!