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「さっき自覚したんじゃないのか? 俺への気持ち」
のぞき込まれ、包まれたままの頬は急激に熱を帯びていく。どうしようもなく火照る顔を逸らそうとしても、阻まれる。
「一人の男として、俺を見ろ。もう、保護される対象じゃない」
彼は一磨が縋り付いていた親子の関係を崩して、新たな関係を築こうと言外にいっている。
そんなことが、あってもいいのだろうか?
「う、うそ……」
「普段は心配になるほど素直なくせに、こんな時ばかり疑り深くなるな」
「だって、十歳離れてるおじさんだし、男同士だし親子だし、それに、」
自分は彼に好いてもらえるほど、可愛くも綺麗でもない。
「今更だ。ぐだぐだ考えるな、馬鹿。もう腹括って流されちまえ」
「っふ、……ぁんー……」
甘く、あまい。
陶然と酔いしれる。
先程と打って変わって、少しずつ探っていくようなキス。
ぞくりと背筋が粟立つ。
満足そうに目を細める彼を見ていることができず、一磨はキツク瞼を閉じる。その拍子に目尻に溜まっていた滴がこぼれる。
「んんっ」
舌を甘噛みされる。それも快感として拾う。丁寧に、口腔内を犯される。
──越えて、しまった。
隆司と共に親子の境界線を。
身体よりも、こころが。
戸惑いとともに、奥底からじわじわと湧き上がるもの。
名を付けるとしたら、おそらく歓喜。
可愛らしい音を立てて、唇が離れる。
互いを結びつける銀の糸に口角を上げ、いやらしく舌で舐め上げる隆司に視界が揺れる。
相手の腕に縋った指は力が抜け、重力に従ってソファを掠める。
力が入らないのは、指ばかりでなく、全身。
崩れ落ちるのを防ぐのは、腰を支えた逞しい彼の腕。
「……ぁ」
首に掛かる吐息。首筋を伝い、鎖骨に感じるチリリとした痛み。
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