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『いらっしゃいませー。』
俺は今日も髪を切る。
俺の職業は美容師で20歳で専門学校を卒業して以来ずっとここアンジュで働いている。
今年28歳になる俺は、4月からこの店の店長代理に就任した。
さほど大きい店ではないけれど、客足もまぁまぁなヘアサロンだ。
俺がなぜ美容師になったか…
それはいつか聞いたアイツの夢が美容師だったからだ。
美容師をしていれば何かの機会に会えるかもしれないと、そんな理由で始めた仕事だったが、元々社交的だった俺には天職だったのかもしれない。
指名率もNo.1だし、結構人気な方だ。
特に女性客には…
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ある日、新入社員の面接をしてほしいと店長に頼まれたのだが、自分の休みの日とかぶっていたので断った。
店長代理にもなると色々と任せられる仕事も増えて、髪を切るだけではなく、店の経営のことや面接なんかも店長と一緒に考える。
『おはよーっす。』
『おう。おはよう、平岡。新人紹介するわ。白石 陸(シライシ リク)君。』
休み明け、職場に行ってみると新人が一人。
なんでも他の店で働いていたが、そこの店が経営破綻のため閉店するからとうちに流れてきたようだった。
経営破綻するような店からくるやつってどんなやつなんだよ…と心配になったが、見た目的には何も問題はなく…というか、女性客に人気がありそうなやつだった。
身長は…そうだな、俺が180cmだからそれと同じぐらいか少し低いぐらい。
髪は少し茶色で緩くパーマが当たったショートって感じかな?
うん。女子にモテそう。
俺は美容師にしては珍しく黒髪で、左耳にピアス3つ。
俺もそこそこモテるんだけどな…
それを上回りそうな美形だった。
『あっ…どうも。よろしく。』
『よろしくお願いします。』
『今26歳で前のサロンでもカットしてたみたいだからアシスタントちょっとしてもらったらもうカットに入ってもらうから。』
『へぇ。頑張って。』
『頑張ります。』
美容師って本当センスが必要なんだと思う。
店によってもやり方は違うが、何年経ってもアシスタントから抜け出せず挫折して辞めてしまうやつも少なくない。
アシスタント歴が短くても髪を切るセンスや、お客さんとのトークセンス、そういうものすべてが揃っているやつは割りと出世が早い。
俺もどちらかと言えば後者の方で、27歳で店長になるのは出世コースだと思う。
『平岡、お前白石の担当。店のこと色々教えてやって。』
『はい。』
店長に言われた通り俺は白石の担当になり色々と教えることになった。
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