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12 陸side
『好きです!!付き合ってください!!』
『えっ?ってか、お前…』
『男です!!!男が男を好きだなんておかしいですよね!!でも好きなんです!!』
『ふぅーん。いいよ。』
『えっ!?』
『いいよ。付き合ってやる。』
絶対に断られると思っていた俺は言葉を失いその場に立ち尽くした。
これは現実なのか…
何度も何度も頬をつねり痛みを感じては現実なのだと喜ぶ。
でも実際男同士が付き合ったからといって何をするわけでもなくて…
デートもしない、学校でも話さない、メールは少しだけ…将来のことを話した。
先輩は夢はないなんて言ったけど、俺は小さい頃から美容師になりたくて…
そのことを話した時、「内向的なお前には無理だろ。」なんて言われると思っていたのに「頑張って。」という返事が来たので驚いた。
俺は絶対美容師になる。そう心に誓った。
ある日、すごい大雨で傘のない俺は帰ることができず雨宿りをしていた。
そんな時後ろから急に声をかけられて驚いた。
そこにいたのは傘を持った先輩で、入って行くか?と言う。
普段話したこともあまりなく、イキナリの相合傘という高い高いハードルに俺の心臓はバクバク。
雨の音で聞こえないかもしれないけれど、出来るだけ先輩から離れて歩いた。
なぜそんなに離れているんだ。濡れるぞ。と言われ、手を引っ張られ肩がぶつかる。
ドキドキとうるさい心臓の音が肩を通じてバレてしまうのではないかと余計ドキドキした。
先輩の家に着き、帰ると告げる俺に雨宿りして行けば?という先輩。
俺は家に上がり、部屋に入ってからでも落ち着かずウロウロしていた。
そんな俺の行動に笑った先輩の笑顔。
キラキラして眩しい笑顔。
俺に向けられた笑顔にまた俺の心臓は飛び跳ねる。
沈黙が辛くて帰ろうとした俺の腕を引き先輩が俺の唇を塞ぐ。
初めてのことで動揺したのと、先輩とキスをしているという事実に恥ずかしくなり目をギュッと瞑って耐える。
こういうことに慣れた先輩は俺の体のあちこちを触って…
気付いた時には結ばれていた。
何度忘れようとしただろう。
でも忘れられなくて…
突然言い渡された親の転勤。
それと同時に転校することを先輩に告げた。
ふぅ〜ん。という素っ気ない返事。
やっぱり俺は遊ばれていたのだ…
わかっていたことなのにショックを受けている自分がいた。
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