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15 陸side
俺がこの店で働き始めて一ヶ月が過ぎた。
店長からカットの腕を見せて欲しいと言われ、久しぶりに握るハサミに緊張する。
いいね。と店長に言われすごく嬉しかった。
明日からカットをしてもいいという許しをもらいノリノリで後片付けをする。
すると、なんだか感じる視線。
顔を上げると先輩が俺を見ていた。
『なぁ…俺とお前どっかで会ったことない?』
いきなりの質問に心臓が止まりそうになる。
『…ないと思いますけど……』
『だよな。』
俺のドキドキが悟られないように必死で掃除をする。
先輩は俺だと気付いたのだろうか?
いや、そんな遊びで一回寝たようなやつのことなんて覚えているわけがない。
俺は遊びで寝た女は忘れる主義だし、きっと先輩も同じだろう。
俺は、ずっと先輩を忘れられなかったけど、今さらどうしようなんて気はサラサラない。
好きです。なんて言ってみろ…
どうせバカにされるだけだ。
一生この気持ちに蓋をして生きて行く、そう決めたんだ。
きっと先輩以上に好きな人は現れない。
そう思うけど、俺は今日も女を抱く。
虚しいけれど、これが現実だ。
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