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『あっ…啓太…好き…大好き……』
俺の腰の振りに合わせて喘ぐ千秋がすごく綺麗で魅力的だった。
だけどやっぱり心の中は大きな穴が空いたように虚しい。
目の前には最高の女がいるのに頭に浮かぶのは陸ばかり…
あの時の陸を想像して俺は果てた。
『啓太…本当?』
『うん、本当。』
千秋にヨリを戻して欲しいと言われた。
高校時代、陸に追いかけられた俺は今度は俺が追いかけようと必死に陸を追いかけた。
そして再会して…忘れてと言われた。
いや、あれが本当の陸かどうか……
もうそんなことはどうでもいい。
疲れた。
追いかけるのに疲れた俺は、俺を求めてくれるところへと逃げた。
ただそれだけ。
ましてや男を好きだなんて将来性に欠ける。
女と付き合って、結婚して、子供を作って…それが普通じゃないか。
そう思うことで俺は自分を落ち着かせた。
これでよかったんだ。
何度も何度も自分に言い聞かせた。
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