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38 陸side

麗美さんはすごく物腰柔らかで優しい女性だった。 男性経験もなさそうで、大切にしないといけないな…と思った。 そして、周囲の目もあるので、色んな女との関係は断ち切り、麗美さんだけを見るように心がけるようにした。 付き合い始めて一ヶ月が過ぎた頃、店長から呼び出された。 『白石、お前彼女いる?』 『えぇっ!?なんですか急に。』 『いや、なんかいい子いないかな?って知り合いに言われてて…』 『すみません…俺、彼女いるんで。』 『あっ!!そうか〜そりゃダメだなぁ。で、どんな子?』 『どんな子っていうか…父の会社の上司の娘さんで…』 『じゃぁもう結婚も間違いなしだな。おめでとう。』 『えっ?ちょっ…』 『いや、そうだろ?それ政略結婚だろ?裏切ったら痛い目見るぞ〜』 俺を脅しているのかなんなのか… 店長は笑ながらどこかへ行ってしまった。 でも、本当そうなのかもしれない。 俺が縁談を受けた時点で決まっていたことなのかもしれない。 胸の中の先輩へのモヤモヤは消えないけど、これでみんなが幸せなら…この前そう思ったじゃないか。 遠くで備品を整理する先輩を見ながら溜息をついた。

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