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『店長!!!』
会場に着くと店長や他のスタッフ達が店を閉めて駆け付けてくれていた。
『おう、お前らどう?いい感じ?』
『そうですね…できるだけのことはしたんで、あとは本番で。』
『よし!!じゃぁ頑張って。』
店長に背中を叩かれ、俺と白石は控え室へと向かった。
モデルの女性も到着し、最終の打ち合わせののちに本番が始まる。
どこの美容室も気合が入っており、熱気がすごい。
舞台の上にズラリと並び、制限時間内に仕上げる。
俺は、結果がうんぬんということよりも、白石と一つのことを一緒にできるということへの喜びが大きかった。
モデルの女性に施したメイクやヘアは満足の行く物に仕上がり、客席の歓声を浴びる。
結果は見事優勝。
白石は本当に嬉しそうで今にも泣き出しそうだった。
『おめでとう!!!』
店長やスタッフ達にお祝いの言葉を言われ、俺も白石も少し照れる。
モデルの女性を白石と二人で会場の出口まで送り届けると、深々と頭を下げた。
『平岡さん、よかったですね。』
『ほんとだな。お前のおかげだよ。ありがとう。』
『俺、嬉しくて涙出そうですよ。』
そう言う白石の目には少し涙が浮かんでいて、声も震えていた。
『胸貸そうか?』
冗談で言ったつもりの一言に、白石が動き出す。
『借ります。』
そう言うと白石は俺の胸でワンワン泣き始めた。
『ちょっ…お前本気!?ってか、泣き方男前すぎんだろ!!』
男らしい泣き方すぎて少し笑ってしまったが、なんだか可愛くて頭をポンポンと撫でる。
『俺…ずっとサロン代わってきたんで…こうやって一つのことに打ち込めることもなかったし…すごく嬉しくて…』
『そうか…よかったな。』
宥めるように背中を摩ってやると、白石は我に返ったように恥ずかしがって俺から離れた。
『なんだよ。』
『いや、すみません。取り乱しました…』
真っ赤な顔で俯きながらそう言う白石がまた可愛くて…
「好き。」
その言葉が口から出そうになったが、慌てて飲み込んだ。
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