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第68話

あれから俺と白石はほとんど話していない。 話すとしても必要最低限。 俺も白石もどちらもなんだか気まずかった。 白石の結婚式を明日に控え、店はバタバタと忙しい。 店長の図らいで、明日は店を休みにしてみんなで白石の結婚式に出席するのだ。 正直俺は行きたくない。 何が楽しくて好きなやつが他のやつと結婚するところを見ないといけないのか… 何かの拷問か? いや、一種のプレイか? そんなアホみたいな考えが頭の中を渦巻きながらお客様の対応をする。 夜になっても店はお客様で溢れ、慌ただしかった。 『ありがとうございました。』 最後のお客様が帰り、みんなで一息つくと、片付けを始めた。 なんだか俺は帰りたくなくて、裏で備品の整理をすることにした。 『お先。』 『お先です。』 店長や他のスタッフが続々と帰って行き、俺は裏の備品の整理が終わったので、ホールへと戻った。 『白石?』 そこには白石ただ一人がおり、他のスタッフはみんな帰っていた。 『あっ…平岡さん。まだいたんですか?』 『おう…。裏で備品の整理してた。』 『そうですか…』 『お前、明日結婚式だろ?早く帰らなくていいの?』 『あ…えと…それは…』 『なぁ……髪、切ってやろうか?』 『えっ?』 『襟足伸びてる。全体ももうちょっと軽くして…どう?』 『あ…』 『明日のためにかっこよくしてやるよ。』 『はい…』 返事をしてコクンと頷く白石を椅子に座らせた。

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