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71 陸 side

鏡を見て自分のグチャグチャな顔に驚いた。 『酷い顔…』 さっきからずっと泣き続けている。 なんであんなこと言ってしまったんだろう… ずっと自分の心の中に閉まっておかなきゃいけなかったのに… 閉まっておけば、こんなに辛くなることなんてなかったのに… 俺たちは手遅れ。 自分で言ってて寂しくなった。 大好きで大好きで仕方が無い人と、両思いなのに一緒にいれないことがこんなにも辛いなんて。 「陸…好きだよ…」 先輩に耳元で囁かれるように言われた言葉が、ずっと耳に残っている。 高校生の頃にも言ってもらったことなかった。 本当に本当に嬉しい。 なのに…一緒にいれない。 なんだこれ。 辛すぎんだろ… 俺が結婚することでみんなが幸せになるなら俺は犠牲になっても平気。 でも…先輩は? 先輩は俺が結婚することで幸せになる? …いや、きっとならないだろう。 先輩… 一緒にいたいよ… もう一度鏡を見て、そっと唇に触れる。 さっきの先輩の熱がまだ忘れられない。 好き… 大好き… 大好きなんだよ… 自分で今日のことは忘れてくださいなんて言ったけど… 忘れられないのは…俺だ。

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