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73 陸side

『どうしたの?その顔。』 『なにが?』 『目が腫れてパンパンじゃない!!』 母さんに言われ目を擦った。 『あ!!擦っちゃダメよ!!!冷やしたタオル持って来るから待ってなさい!!あなた大切な日に何してるのよ!!』 母さんは怒りながら控え室を出て行った。 鏡を見る。 本当に酷い顔だ。 結局昨日は一睡もできなかった。 一晩中泣いて、泣き疲れたら寝れるかな?と思っていたのに、疲れることなくひたすらに涙は流れて… 結局朝を迎えてしまった。 婚姻届は結婚式の後、二次会までの間に出しに行こうということになっている。 紙一枚で簡単に引っ付けるんだもん。 怖い世の中だよな… 先輩も来るのかな? 来るよね… 何気に部屋の窓から外を見ると来場者が続々と式場の門をくぐっていた。 『あっ…』 そこに愛しい人の姿を見つけ、胸が高鳴った。 俺…やっぱり結婚したくないよ… 好きな人とずっと一緒にいたい。 目からはまた涙が溢れて、ちょうど部屋に戻って来た母さんに怒られた。 『しっかりしなさいよ!!もしかして感極まってるの?嫁に行く娘みたいね。』 母さんは少し笑いながら俺の目に冷たいタオルを当ててくれた。 『自分でできるから。』 それだけ言うと、母さんの手からタオルを取り、少し上を向いて瞼の上にタオルを置いた。

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