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第3話
それから暫く龍之介の別人の顔がチラッき、モヤモヤする理由も分からず、あいつの顔がまともに見れなくなってしまった。
龍之介は普段通りで、俺だけぎこちない。たかちゃんも変な顔をしてたけど、俺は次第に龍之介から距離を置くようになっていた。
俺が自宅の玄関を開けて入ろうとした時、声を掛けられた。
「ちーちゃん」
そう呼ぶのはただ一人、龍之介だけだ。なるべく普段通りにしようと龍之介に毒付いた。
「んっだよ!いきなり声掛けんな! びっくりするだろ!」
「そうだね、ごめん」
気怠い話し方はいつも通りで、俺より頭二個分ぐらい背が高い龍之介の顔を見た。少しいい面がいつの間にか、イケメンと呼ばれる顔になっていた。その顔をヘラっと緩めて笑った。
「っで……なに?」
「これちーちゃんのだよね」
龍之介が差し出したのは、ずっと探しても見つからなか生徒手帳だった。
「なんでおまえが持ってんの?」
「僕の家にあったよ」
ヘラと笑う龍之介の顔から目線を逸らすと、生徒手帳を受け取り、玄関のドアを開けた。
「じゃな」
ガンっと音がして振り返ると、俺が閉めようとしたドアを龍之介が掴んでいた。ドアを開けて龍之介が中に入ってくる。
「っんだよ!!」
「ちーちゃんあの日、来てたんだね。見たんでしょう?」
「なにを!」
いつの間にか龍之介に壁ドンならぬ壁ドア?! されていて、下から睨み付けている俺を鼻で笑った。龍之介が俺の耳元に顔を近付けた。龍之介の息が掛かり全身が総毛立つ。
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