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第23話

「ん〜!いい匂いがします!」 「そうでしょ〜千秋ちゃんのご実家から頂いた野菜のおかげだよ〜」 「いえいえ、美味しく調理してもらえて家族も野菜も喜びます!」 ピーマンの中にたっぷりチーズを入れて、豚肉で巻いただけの簡単ピーマンの肉巻き。 それから、また簡単にトマトと卵の炒めもの。 白菜とニンジンに、コンソメを投入しただけのスープを作った。 「あの…そろそろ、そっちに行ってもいいですか?」 料理を始める前、千秋ちゃんが“お手伝いします!”と言ってくれたものの、初めて来てくれた人に手伝わせるわけにはいかないのと、一応恋人だって言った手前かっこつけたくなった。 千秋ちゃんには“見られると恥ずかしい”と伝えても、こっちが気になっているようで、身体はテレビを向いたまま顔は俺の方に向けている。 「ははは、ありがとう。そしたらコレ運んでくれる?」 嬉しそうにパタパタと近づいてきて、そんなに綺麗に盛りつけられていない料理を見て目を輝かせた。 その反応が素直に嬉しく、千秋ちゃんの頭をわしゃわしゃ撫でた。 「じゃあ、これよろしくね」 「あっ…はい!」 撫でられたことが嬉しかったようで、俺の手が離れた頭に自分の手を置いた。 そして、俺の顔を見てふにゃっと笑い、料理を運んでいく。 「なんなんだ…可愛い……」 千秋ちゃんには見えないキッチンの死角に入り、頭を抱えた。 自分の心が勝手にきゅんとしていて、自分のものじゃないような感情に戸惑う。 「仁先輩!これも持っていって大丈夫ですか?」 「あ、ああうん!ありがとう。後は俺やるから座っててね」 「そしたら…あとお酒だけ持っていきますね」 い、いい子だ…… この場にうずくまって悶えたいほどに、可愛くていい子だ。 「先輩どうしました?冷めないうちに食べませんか?」 「ああ、ごめんね。ちょっとボーッとしちゃった」 「ごめんなさい…僕手伝わずに座ってたから疲れちゃいましたよね。次は僕が作りますから!」 俺が座ってていいよって言ったのに、勘違いでも、鼻息が聞こえそうなほど意気込む姿にほっこりした。 2人分のスープを持って、俺もソファーに座る。 千秋ちゃんが持ってきてくれた少し汗をかいたビールを持って、フタを開けると泡のシュワシュワした音が心地よく感じた。 「千秋ちゃん、カンパイしよ!」 「はい!」 「じゃあ…出会いを祝して…」 「ふふふ」 「「カンパイ!!」」 この乾杯から、改めて千秋ちゃんと接してみようと思った。 いま千秋ちゃんの雰囲気に飲まれていたとしてもいいから、もう少し一緒にいてみよう。 「これからよろしくね」

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