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第19話
二度目の目覚めは、位置が変わった太陽によって起こされた。
枕元にある電子時計を見れば、仮眠でもなくガッツリと眠っていたようでいい時間になっている。
ふと、目線に入った携帯を見れば、メールを知らせるライトが点滅していた。
一瞬ドキリとする心臓が、何に対して反応したのかは分かっている。
少し焦ってメールを確認すると、高鳴る気持ちを無視するように、昨日自分から送った幹事へのメールの返事だった。
あれから随分時間は経ったのに、来てほしい人からの連絡はない。
期待なんてしていなかったはずが、いつの間にか期待で溢れていた。
なんとなく動きたくなくて、ベッドの上でゴロゴロする。
千秋ちゃんから連絡の来ない携帯を握って、窓の外を見つめた。
あの雲、ソフトクリームみたいだ。
なんて子供みたいな事を考えれば、お腹がぐぅっと鳴る。
昨日の飲み会以来、飲み食いした記憶もない。
少しではあっても酒を飲んだなら、水分は補給しないと脱水症状になっても困る。
しょうがなく重い腰を上げてキッチンへ立ち、買い置きされたカップ麺の一つを取り、封をあけた。
「お湯…」
そう呟けばお湯が出てくるなんてことはなく、やかんにカップ麺1回分ほどの水を入れて火にかけた。
冷蔵庫にある冷え冷えのミネラルウォーターをコップへつぎ、一気に飲み干す。
酒を飲んだ後は、自分が思ってるよりノドが乾く。
もう一杯水をついで、テーブルの上に置いた。
やかんが弱々しく、ピィッと鳴き出したのを確認して火を消す。
用意していたカップ麺にお湯を注いで、テーブルに置いた水の隣にカップ麺も置く。
ドラマの再放送ばかりが流れるテレビのチャンネルを変えながら、数分しかない時間をつぶす。
そこで、何気なく流れた人気のDVDランキングが目に入った。
「今週の一位も、先週と変わらず独占したまま!」
「映画の上映をしていた時から人気でしたよね〜」
そんなに人気な映画を、俺はまだ観ていない。
その下に、潜伏でもしているかのような映画は3回も観たのに。
『ま、今度オススメの映画くらい教えなさいよ』
ついこの間、聞いた言葉だ。
仕事の合間にした俺の学生時代の話の延長として、テキトーに言われた言葉だが、昨日の飲み会で誰にオススメの映画を訊くこともなかった。
それ以前に、事件が起こり過ぎて忘れていた。
最近そこまでアタリの映画はないが、レンタルショップにも行ってない。
久々に行ってみるか……。
「あっ、やっべ」
気がつけば麺はのびのび、汁も消えていた。
食べ終わったらレンタルショップに行こう、そう思いながらカラカラの麺をすすった。
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