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第20話

家から、徒歩で行ける距離にあるレンタルショップ。 マンションを借りる決め手になったくらい、レンタルショップが近いというところは大きかった。 それでも、最近はレンタルショップに行く機会が少なく、久しぶりに映画が借りられる…… そう思うと、足取りも軽くなった。 レンタルショップまでの道のりは、人の少ない廃れた公園と、キャンキャンうるさい小型犬が番犬をする家の横を通るくらいで、特に何もないただの住宅地。 そこをゆっくり歩いても少し汗ばむくらいの太陽で、普段スーツなだけあって休日しか味わえないすり抜ける風がなかなかに心地いい。 久々に何を借りよう……。 のんびりと借りる映画を考えながら、歩き慣れた道を歩く。 気分的に、邦画をダラダラと観たい気分ではない。 情熱的な恋愛ものでも観ようか。 それとも、どこか飛び抜けたSFファンタジーを観ようか。 もういっそのこと、随分昔のコメディを観るのもありだな。 ……そう、終わりの無い会話を頭の中でしていると、ここまで気分を盛り上げてくれる目的地が見えた。 そこまで大きくもない少し廃れたレンタルショップに、胸が高鳴る。 「いらっしゃいませー」 店内のBGMに負けそうな、けだるい店員の声が聞こえた。 気分よく歩けば、最近は履いていなかったハイカットのスニーカーが床を鳴らし、音がその場に響く。 前はよく居たいつもの場所に、いつものように立つ。 定番と店員の好みの作品しかないと言っても間違いではないような店内のDVDは、今でも変わっていなかった。 このダラダラとした空気感、倉庫らしい埃のニオイ、全部がなつかしく感じる。 久々のレンタルショップに気分も上がり、いつもは観ない韓国ドラマやホラー映画のコーナーまで回ってみる。 全然知らない最新作から、俺でも知ってる昔からの有名作品、大学生の頃を思い出すようでワクワクした。 すると、さっきまで店員以外誰もいなかったレンタルショップに、誰かが入ってくる自動ドアの音がした。 常連と付き合いがあるわけでもなく、顔を合わせようが、何もないから気にすることもない。 俺は気にせず、レンタルしたいDVDを数枚片手に持ちながら、フラフラ歩いた。 と、その時。 少し離れたところに人影が見え、なんとなくどんな人か目で追ってしまう。 服装的に男性、だけど色白で小柄、サラサラの黒髪、洒落っ気のない眼鏡…… 「ち……!」 千秋ちゃんと言いかけた自分の口を、慌てて抑えた。 昨日と今日のことで、正直気まずい…… パッと千秋ちゃんから見えない位置に移動して、深呼吸をした。 このままレジに行けば、顔を合わせることなくここを脱出できる。 けど、千秋ちゃんは俺のこと好きって言ってくれてるんだよなぁ。 そう思い出した途端、何かに操られてるかのように思った。 ……そうだ、いい人ぶらなきゃ。 君の好きな人らしく。

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