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第422話
「ふふ、手縛っちゃった」
いたずらっ子のような笑みを浮かべて、茶目っ気たっぷりにそう言った正和さんは、俺の唇を親指でそっと撫でる。
彼のもう片方の手は、俺の後ろ側――椅子の背もたれに乗せられているので、自然と顔が近くなり、胸がドキドキと早鐘を打った。
「っ……」
「どうしようかなぁ。久々だよね」
正和さんはそう言いながら、スラックス越しに硬くなったものに触れて、煽るように優しく揉んでくる。
艶めかしく動く彼の指から目が離せなくて、顔をかあっと赤く染めれば、正和さんはクスッと笑って見せつけるようにゆっくり手を動かした。
これからこの指にあちこち苛められるのかと思ったら、ゾクゾクして、先走りで下着がじわりと濡れる。
「純、おねだりは?」
「~~っ」
「……しないんだったら今日は素股だね」
「ゃ、やだ……!」
「じゃあ、可愛くしてみせて」
彼の手は脚のあわいを擽るように撫でた後、太ももの上に落ち着いた。スーッと細めた、いじわるな目で俺のことを見下ろして、急かすようにわずかに首を傾げる。
「ま、正和さんと、したいから……抱い、て……」
「うーん、もっと可愛くしてほしいなぁ」
可愛くってなんだよ。
そう思いながら考えを巡らせるけれど、浮かんできたのはアダルトビデオのような淫語ばかりで、全身を真っ赤に染めて思わず目を伏せる。
「じゅーん」
「……ま、まさかず、さんの……お注射、して……っ」
意を決して言った言葉は、素面 で言うには恥ずかしすぎて、小さな声になってしまったが、聞き取れないほどではない。
だが、羞恥に堪えられなくなって、唇をぎゅっと噛めば、彼はつまらなそうにため息をついた。
「……純の言葉で聞きたいんだけど」
「っ、だって」
どうやら正和さんには考えていることが全部お見通しらしい。
けれど、そんなことを言われても、浮かばないのだから困ってしまう。
「深く考える必要ないよ」
泣きそうな顔で見上げれば、彼は優しく笑って、再び唇を重ねた。彼の舌が入ってきて、中をぐちゃぐちゃに掻き回されると、何も考えられなくなってしまう。
「はぁ……っ、ぁ」
甘くて蕩けるような熱いキスに息が上がって、もじもじと膝を擦り合わせるけれど、手が拘束されているからそれ以上の身動きはとれなくて、火照って焦れた体はゾクゾク震えた。
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