430 / 494

第430話

 それなのに。彼は煽るような手つきで抽挿し、悪戯に胸を撫で回す。ちゅっちゅっと啄むようなキスをして、くちゅっと舌が入ってくると、味わうようにねっとり舌を絡めて、吸い上げられた。 「ふっ、ぁ……んんっ」  唇を塞がれてしまったら、言葉も紡げなくなってしまう。蕩けるような熱いキスに、抗議する気力も、理性も、全て奪われて、彼の動きに身を任せた。 「ん、んぅ、はぁ……っ」 「かわいい。……どの体勢がいい?」 「なんでも、い、から……はやく、ちょーだい」 「じゃあ、純が上に乗って」 「へ……?」  彼に体を起こされて、仰向けに転がった彼の上に(また)がせられる。 「どうしたらいいの……?」 「純の好きにしていいよ」  いつの間にズボンを脱いだのか、彼は屹立(きつりつ)した熱いものを俺の臀部(でんぶ)に押し当ててくる。  てっきり正和さん主導でしてくれるものだと思っていたから、突然のバトンタッチに戸惑った。  彼はそんな俺を楽しそうに見上げながらシャツを脱ぐ。 「早くおいで」 「っ……」  喉をゴクリと鳴らして腰を上げ、彼のものに手を添えれば、彼はスーッと細めた目で俺を見た。厭らしい視線に、全身がかあっと火照って熱くなる。  恥ずかしさから逃れるように視線を逸らして目を瞑れば、わざとらしくクスクス笑う声が聞こえてきた。  けれど、気にしたら彼がさらにからかってくるのは目に見えているので、入れることだけに集中する。 「ん……はぁ、ああっ」  ゆっくり腰を落とせば、熱く猛ったそれがググッと肉環を割って中にはいってくる。十分にほぐしてもらったおかげで、いつもキツイ亀頭部分ももすんなり受け入れることができた。 「はぁ…ぅ」 「ほら、休んでないで動いて」  正和さんは俺の腰に手を添えると、下からズンと突き上げてくる。ほんの一回、少し刺激されただけだが、他の体位より深いところで彼を感じるせいか、目の前がチカチカした。

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!