昨日は意識が飛ぶまで行為に及び、目が覚めたら深夜だった。まだ起きていた彼と遅めの夕飯を食べてベッドに戻ったけれど、中途半端に眠ってしまった為、なかなか寝付くことができなかった。 　結局寝たのは朝方で、テスト中は眠くて眠くて仕方なかった。しかも今日は苦手な科目で、良い点は取れそうもない。最悪だ。 「数 Ⅱ どうだったー？」 「かなりやばいかもー。拓人は？」 「今回満点いけるかも！」 「え、まじ？」 「たぶん！」 「はぁ～～っ」 「でも純もかなり勉強してたじゃん」 「そうだけどさぁ……ヤマ外れた」 　なんて、今回のテストにヤマも何もないけれど、昨日勉強できていれば、しっかり眠れていれば、と悔やまずにはいられなかった。 「あー……どんまい！」 　でもまあ、彼とちゃんと抱き合ったのは久しぶりで、すごく嬉しかったから、これはこれで良いのだろう。テストはまた次のとき頑張れば良い。 「じゃあ、また明日な！」 「うん」 　拓人と別れて家に着くと、美味しそうな甘い香りが玄関まで漂っていて、お腹が空いてくる。 　何の匂いだろう、とキッチンを覗けば、彼がケーキを作っているところだった。甘い香りはスポンジを焼いた時の匂いなのだろう。 「おかえり」 「ただいまー。ケーキ作ってんの？」 「甘いの好きでしょ？　ご飯も今作るから待ってて」 「ん、着替えてくる」 　自室で私服に着替えて明日の準備をした後、昼食作りを少しだけ手伝って、それをリビングのテーブルに運ぶ。 　正和さんが作ってくれるハンバーグはとっても美味しくて、思わず頬が緩んだ。 「テストどうだった？」 「……だめだった。赤点ではない、はず」 「そっか。……ごめんね」 　悪いと思っているのか、彼は申し訳なさそうにそう言って目を伏せる。 　ケーキを作っていたのも俺の機嫌を取るためだったのかもしれない。