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第435話
「別に……俺も普段から勉強サボってたし。……正和さんと前みたいにできて……嬉しかったし」
頬がかあっと火照るのがわかって俯けば、彼はクスクス笑った。
「そんな可愛いこと言ってると、今日もしちゃうよ」
「そ、それは困る」
「……嬉しそうな顔で言われてもねぇ」
「っ……でも本当に今日はだめ」
「ふふ、わかってるよ。ご飯食べたら勉強しよっか。出そうな所まとめといたから教えてあげる」
「ほんとに? ありがとう!」
ぱあっと顔を上げてにっこり笑えば、彼は何故か少し困ったような顔で微笑んだ。
何かまずいことを言っただろうか、と自分の言動を振り返るけれど、思い当たる節はない。
「どうしたの……?」
「純ってこんな可愛かったっけ?」
「は? …………大丈夫?」
「いやいや、なにその顔。やっぱ可愛くない」
そう言いながら、ハンバーグを綺麗に切って口に運ぶ彼から視線を逸らす。
可愛いと言われても嬉しくないけれど、可愛くないと否定されるのもなんだか面白くない。少しむっとして唇を尖らせれば、正和さんはクスクス笑った。
「……そういえば、旅行って何日から?」
「二十六から。修了式の次の日だよ」
「いつまで? どこ行くの?」
「四月五日にこっち帰ってくる予定。ハワイで純とのんびりしようかなあって」
「ふーん。……え、宿題どうすんの」
「どうせ少し前に配られるでしょ。それまでに終わらせればいいじゃん」
そう言われても、正和さんほど要領良くないし、出される量によっては終わらせられる自信がない。
「終わらなかったらお仕置き」
「えー」
そんなの理不尽だ、とか思うところはあるけれど、終わらせなければ旅行中にやる羽目になるのだ。それは俺だって避けたい。
「てか、そんなに服ないし」
「この前買ってあげたじゃん」
「だって、なんか変なのばっかじゃん」
「そうかなぁ、可愛いと思うけど」
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